キンクス初心者は最初に何を聞く? オレが選んだお勧めアルバム4枚

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キンクスはどのアルバムから聞いたら良い?

 The Kinksはその長い活動期間に沢山のアルバムを残してきた。1964年のデビューから1996年の活動停止まで32年間。その間にコンスタントにアルバムを発表し続けてきた。
 その内訳はスタジオアルバムが24枚に、ライブアルバムが4枚(最後のアルバム、To the boneは1994年に出た1枚盤と1996年に出た2枚盤の2種類が有るので、これを別物とするならライブアルバムは5枚になる)。

 初めてThe Kinksのアルバムを買おうする人は、こんなに沢山のアルバムの中から1枚を選ばなければならなくなる。You really got meの様な音を期待して、The village green preservation societyを選ぼうものなら、「オレが欲しかったのはこんなフォークロックのアルバムじゃないぞ!」 これは本当にThe Kinksなのか? と悲嘆に沈むに違いない。

 じゃあ一体どのアルバムから買えばいいのだろうか? 実はオレだってそうだった。オレも初めて彼らのアルバムを買おうとした時にとても戸惑った。いったいどれから手を付ければいいのかと。それは初めてハーレムに入った、アラブの王子様の気持ちと、とても似ている。それに最初から失敗したくないしね。

 そこで老婆心ながら、The Kinksの完全初心者なら、どれを選べば良いか、オレのお勧めを紹介したいと思う。彼らは活動時期によって、随分と芸風が違っていたりするのだ。

 そのあたりを間違って購入してしまって、期待外れのつまらないバンドなんて思われたら、オレたちハードコアThe Kinksファンとしては残念でならない。確かにどのアルバムも傑作だ。ただ、期待と作品のコンセプトの乖離が大きいと、せっかくの出会いが台無しになってしまう。

 そんな訳で、間違ってとってもディープな作品からThe Kinksの世界に踏み込まないように、最適だと思うアルバムを紹介しよう。

 とは言うものの、やはりここは無難にデビューから1970年代までの、いわゆるPYEレーベル時代のシングル集を紹介するのがとっても無難だと思う。この時期のThe Kinksのシングル集を聞いておけば、彼らの代表曲の半分以上は知ったも同然なのだ。

 そりゃあ1970年以降にも、至極の名曲が多数あるのだが、The Kinks初心者には、まずは1970年代までの曲に親しんだ方が良い。そして十分にそれらの曲に馴染んでから、その後の時代に手を付ければ、The Kinksと云う底の見えない古井戸よりもなお深い、ぬかるみの世界から抜け出せなくなることだろう。おいでおいで! オレもそうだった。

PYE Complete Singles collection

 という事でPYEレーベル時代のシングル集を紹介する。The Kinksは、デビューしたPYEレーベルで22枚のシングルをリリースしている。このPYE Complete Singles collectionはその全ての曲のA、B面をリリース順に収録したもの。オレの手元にあるのは、紹介したのとは少し違って、1964年〜1966年までのVol.1、そして1966年〜1970年までのVol.2の2枚に別れているもの。各々ジャケットの基調色が青と赤に別れていて、これはきっとThe Beatlesの今はなき青盤、赤盤を真似したものだと思う。アイキャッチに映っているのが、その2枚のシングルコレクション。
 今ではオレが買ったこの青盤、赤盤は廃盤になってしまったのは残念だが、今はその代わりに2枚組のアルバムとして発売されていた。ただ、又残念な事にこれも廃盤のようで中古盤でしか手に入らない。

Kinks the singles collection

 上記のシングルコレクションが手に入らないのなら、このThe singles collectionは、同時期のシングルを完全収録したものじゃないが、初期の作品を知るには最適の内容だと思う。ジャケットもカッコ良いので、尚お勧めだ。このアルバムも2枚組なのだが、シングルコレクションは1枚目だけ。で、2枚目の方はというと、おまけのレアトラックス集になっている。そういったわけで、初心者もベテランも楽しめる内容になってはいるのだが、なんとなく作品としてのまとまりに欠けるのは致し方ない。ただ2枚目に収録されているレアトラックスも名曲ぞろいなので、これからの予習と思えば悪くない選択だと思う。

The essential Kinks

  そしてこれは1964年のデビューから1996年の活動停止まで、32年間の間に出した作品の中から選んだベストアルバム。正直な所それだけの長期間から選択した場合、初期と後期では音にえらい違いが有りすぎて違和感が有るのはどうしょうもない。だけども、Ray様の作る素晴らしいメロディーと云う一本の筋が通っているので、こういうベスト盤も有りなのかもしれない。オレはあまり勧めたいとは思わないが、とにかく彼らの活動全体を網羅したものが聞きたいと云う方には、これが良いと思う。

 という事で、The Kinksの最初の1枚としては、PYE時代のシングルコレクションが最適だとオレは思うんだ。発売順に曲が並んでいるので、極初期の白人R&Bサウンド、キンキーサウンドが、徐々に変化して行く。イギリスの伝統音楽、フォーク等も取入れられてだんだんと音の熟成度を増して行く様が楽しめる。その当時有象無象いた、あの時代の音のロックバンドが、まさしくThe Kinks以外何ものでも無い音へと変化して行く様が良くわかると思うのだ。

 そして聞き所は音だけじゃなく、歌詞にも注目してもらえたらと思う。The Kinksは歌詞もとても良いのだ。初期のYou & Meと云った、たわいの無いラブソングがアルバムを重ねる毎に、次第に内省的になってゆく。

 1970年発表のApemanでは、この世を厭世的に見る歌にまで変化して行く様が、非常にに面白い(Apemanでは核戦争や環境汚染の世界に生きるくらいなら、類人猿になって南の島でノンビリと暮らしたいと歌う)。

ライブアルバムTo The Boneは入門編としても最適!

ここまでベストアルバムや、シングルコレクションを紹介してきたけれども、もう一つ入門編としても素晴らしいアルバムがある事を忘れていた。

それはThe Kinksとして(いまのところ)最後のアルバム、To the boneだ。このアルバムはちょっと変則的で、最初1994年に1枚もののスタジオライブアルバムとして発表された。その後に1996年にあらためてPhobia発表後のツアーのライブ音源を拡充した、2枚もののアルバムとして再発売されたアルバムだ。

※こちらのCDはアンプラグドライブ中心の1枚盤

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ライブアルバムだけれども、1980年代までの彼らのキャリアの中から、名曲を選んで演奏しているので、The Kinksの入門編としてもとても良い内容だと思う。

演奏も非常に熱い。The Kinksは最強のノリノリ・ロックンロール・ライブバンドでもあるのだ。The Kinksには何故か取っつきにくいイメージがあるのだが、この熱いライブを聞けば、このバンドがどんなバンドなのか一発で分かるだろう。

長年のファンは勿論、The Kinks初心者にもお勧めのアルバムがTo the bone。The Kinks入門編としても最適だと思う。

これを聞けば、さあ、あなたもThe Kinksファン間違いなし!

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★★★   ★★★   ★★★   ★★★

 皮肉、ウイット、言葉遊び、イギリスらしさ、The Kinksの歌にはそういったものが宝物のように詰め込まれているのだ。Sir Ray Daviesはロックミュージックを、ただのダンスミュージックから、アートの領域にまで広げた立役者の1人だとオレは思っている。

 まずはこのシングルコレクションをすり切れるまで、堪能してくれればと思う。デビュー時のサウンドよりも、60年代後半の曲の方が良いと思えるようになってきたら、あなたも、もう立派なThe Kinksファン。 

 長々と書いてきたけれども、CDショップのThe Kinksコーナーで、何故か最初に手にしてしまったアルバム、それがあなたに連れ帰ってもらいたいアルバムなのかもしれない。あなたが聞くべき音楽は、音楽の方から、あなたの元にやって来るのだ。

「Rock bands will come、Rock bands will go、but Rock’n’roll is gonna go on forever!」


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