大村憲司の「春がいっぱい」YMOと時代が作り上げた傑作アルバム

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春なので、大村賢司の「春がいっぱい」を思い出す

 内地では卒業のシーズンに桜が咲くんだろう。なので卒業と言えば桜なのだろうが、北海道民にはピンと来ない。なんせ桜の季節は春の連休中、もしくは後だからだ。4月に入ったと言うのに、今朝の最低気温はマイナス10度近くまで下る。だけども、雪解けした地面には、何かの植物が芽を出し、少しづつ春らしくなってくる。

 そんな事で北海道のオホーツク地方も、もうすぐ急激に春がいっぱいになる。
 「春がいっぱい」といえばギタリスト大村憲司さんのソロアルバムが頭に浮かんでくる。YMOのサポートギターとして一般にも知られるようになった彼だけども、本来はジャズ、フュージョンの世界の人だ。そんな彼とYMOが寄ってたかって作り上げた、彼の3枚目のソロ・アルバムが「春がいっぱい」。このアルバムは、彼本来の音楽性とはずいぶんかけ離れた、ポップなロックアルバムに仕上がっている。異種交流が産み落とした、奇跡のような傑作アルバムが「春がいっぱい」だ。

 「春がいっぱい」は1981年に発表された。当時オレの周りの連中はみんなYMOに夢中だった。オレもYMOの真似をして、もみ上げを剃って「テクノカット」になんかしちゃったよ。多分中学で一番最初にテクノカットにしたのがオレだと思う。何でも誰かが先駆けるド阿呆がいないと、物事って普及しないんだよね。その後男子の、もみ上げが無い時代がしばらく続く。

 そんなYMOブームのさ中に出されたのがこの「春がいっぱい」。次から次へとYMOはもちろん、メンバーのソロ作品まで出るもんだから、小遣いの少ない中学生はYMOのサポートメンバーの大村憲司のアルバムまでは手が回らない。良いアルバムだと聞いてはいたけれども、なかなか聞く機会がなかったんだよ。

 そんな時に親しくしていた1年先輩の加藤成史さんからそのアルバムを貸してもらえた。あの時この作品を聞いていなかったら、きっと一生大村憲司さんの音楽は聴く事が無かったかもしれない。いやオレが聞くべき音は、向こうからやって来るだね。

 唐突に名前が出てきた加藤成史さんなんだが、NHKのアナウンサーと言えば判る人もいるだろう。彼は地元中学卒業後、函館ラサール高校に進学して、その後東京の大学を卒業。そしてNHKに入りアナウンサーになった。今は栃木局で夕方のローカル番組のキャスターをやっている。また北海道に帰ってきてくれないかな。

http://www6.nhk.or.jp/a-room/search/detail.html?i=136

 この「春がいっぱい」というアルバム、YMOのメンバーが全面参加なんで、まさにYMOっぽいテクノばりばりの音なんだけども、何と言ってもジャズ・ギタリストのアルバムです。大村憲司のギターが前面に出てくると、途端に大村賢司の世界になってしまう。このアルバムを初めて聞いた当時は、とてもテクノしていると思ったんだけどね。改めて聞き直すと、とてもポップなロックアルバムだよ、これは。

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「春がいっぱい」曲紹介

1曲目 Intensive Love Course
 インスト曲でこのアルバムは始まる。雰囲気としてリードギターをキーボードに置き換えたらYMOになるんじゃないかな。春っぽく、わくわくする曲だ。もうYMOファミリーが総出で、寄ってたかって大村賢司のアルバム制作に協力したって感じだな。1曲目から彼のギターソロの特徴、ロングトーンが冴えまくる。途中入る清水泰明のテナーサックスも聞き所だと思う。

2曲目 Under Heavy Hands And Hammers
 大村憲治のボーカルが冴えるw 落ち着いた曲。なにもここまで無理して低い声でぼそぼそと歌うのには何か意味があるのだろうか? 自分で作った曲なので、もうちょっとキーを高くして歌いやすくすればいいのに。

3曲目 Seiko Is Always On Time
 坂本龍一との共作。非常に坂本そのままの曲。坂本龍一のB2 Unitに入っていても違和感の無いインスト曲。曲名のSeikoとは、大村さんの奥さんの名前だそうだ。

4曲目 Far East Man
 これはGeorge Harrisonの曲のカバー。ちょっと気だるげな、何だかレイドバックした曲の雰囲気がとても心地良い。大村さんものびのびギターを弾きまくって、そして歌っている。ちっとも上手じゃないのがいいね。随所で聞かせる一音ロングトーンが、曲の雰囲気をもり立てている。気がついた?

 そういやAndy Summers師匠も1stアルバムで歌声を聞かせているけど、はっきり言って下手。それで懲りたのか、それ以降は歌わなくなってしまったんだけど、その下手さ加減がいい味を出していて、そのアルバム「XYZ」も何度も聞きたくなる作品なんだけどね。

5曲目のKnife Life
 この曲が一番テクノポップしているかもしれない。初期のUltravoxを彷彿させる、エレクトロニクスとロックギターの融合が良い! オレにはもう堪らなく好きなサウンドだな。前曲から打って変って緊張感がみなぎる曲調。また大村さん特有のロングトーンソロから、速弾きに移行し、またロングトーンにというこのギターソロの展開は聞き所だ。そしてそのままエンディングへと言う流れが最高。

6曲目「春がいっぱい Spring Is Nearly Here」
 これはEnglandのロックバンドThe Shadowsのカバー。LpではB面の1曲目にあたる。Knife Lifeで思いっきりテンションを上げたのに、この曲で物凄くのんびりと弛緩してしまう。このメリハリ具合もこのアルバムの良い所だと思う。まるで春の陽気の中でぼんやりと空でも見ているようなこの曲。

7曲目「The Defector」
 オレはこの曲がこのアルバムのベストだと思う。作曲は髙橋幸宏かぁ。そういわれてみれば、幸宏っぽいメロディーだ。あたまから軽快なシンセサイザーで始るこの曲なんだけど、大村さんのギターのバッキング・ギターも非常に聞き応えがある。ギターの音色もさりげないけど、実によく計算されてこの音を出していると思う。注意して聞けばすごく素晴らしいのに、歌を邪魔しないよう事をひたすら気をつけて控えめに弾いている。とても丁寧で繊細なギターだよな。オレはギターの音だけ集中して聞いてしまう。大村さんはソロももちろん素晴らしいのだが、バッキングのギターのセンスも非凡なものを持っているのだ。坂本龍一の主張しまくりのキーボードと大違いだ(←それも好きだけどね)w

8曲目「Inaudible」
 髙橋幸宏のドラムが炸裂するテクノパンクの曲だ。そんな幸宏1人がドラムを叩いて作ったような曲なのだが、作曲は大村さん。正直これは幸宏のドラムだけを聴かせる曲で、次の曲のMapsの単なる繋ぎだと思う。が、この曲からMapsへ途切れなく続くのだが、緊張感を煽って、一気にMapsというよりテンションの高い曲へ繋いでいく流れが素晴らしい。

9曲目「Maps」
 80年代前半のYMOのツアーでも良く演奏されていたんで、YMOファンにもお馴染の曲だ。これまた幸宏の曲か。この曲を前にしたら、New Europeans時代のUltravoxなんか土下座して謝っちゃうな。テクノとニューウェーブが正面からぶつかってキメラになっちゃったって感じのこの音。それにしても、大村さんのカッティングギターがかっこよ過ぎる。神経質に細かくリズムを刻み、曲の緊張を高める、だけども歌は何だか下手で緊張が足りない。その温度差が又良い。

10曲目「The Prince of Shaba」
 Mapsで散々暴れたと思ったら、最後はのんびり。それまでの緊張が嘘みたいに、春の桃源郷で花満開の花畑で大村さんがギターを弾きまくっているようなこのインスト曲でアルバムを〆る。深く歪んだギター音のソロが堪らなく良いな。

 そんなわけで毎年春が来る度に、大村憲司さんのこのアルバムを思い出しす。といって未だに年中聞いているけどね。
 このアルバムは時代が産んだ1つの奇跡だと思う。もともと大村さんはジャズ畑の人で、このアルバムの前に発表していたアルバム「Kenji shock」なんか、Los Angeles録音で、サポートミュージシャンはTOTOにLee Ritenour。もろアメリカンフュージョン。なのにその次に作ったアルバムは、YMOのお手伝いをした事から、それまでの芸風と全くかけ離れたポップでロックなアルバムになってしまった。人との偶然の出会いがこのアルバムを産んだ。いや、このアルバムを生み出すために、YMOとの出会いが有ったのかもしれない。

 そう考えると、「音楽と言う精霊」は、人の人生を操っているのかもしれない。

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