デヴィッド・シルビアン&ロバート・フリップ(1993)これはギターと声による妖術だ David Sylvian&Robert Fripp/The first day
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デヴィッド・シルビアンさんはジャパン時代から好きだ
元Japanのボーカルというよりも、ソロ時代のほうが遥かに長くなってしまったDavid Sylvian氏。彼との出逢いは、オレが中学生の時までさかのぼる(1980年頃の事)。
ある時同級生と洋楽の事を話していて、
「オレJapanが好きなんだ。」
なんて言うと、すかさずそいつから返ってきた答えは、
「え〜〜〜〜ホント? あんな気持ち悪いオカマバンドの何処が良いのよ〜〜〜!!」
と物凄くバカにされた記憶がある。
そんな風にオレをバカにした奴らが大好きなバンドって云うのが、数年前に虚像盛りまくりの映画が大ヒットしたクソー見たいな名前の糞バンドだった。場末のオカマバーのような化粧をしたバンドが好きな奴にJapanをバカにされる覚えはない。それ以来オレはあのバンドが嫌いになってしまった(笑)。
確かにDavid Sylvianのボーカルは、クネクネと節を回すので男らしくはないが、とってもステキだと思う。男が聞いてもうっとりとしてしまう。服装だって、見てみろ! 今じゃあんなカッコしたロックバンドばかりじゃないか。彼らは数十年先の未来を先取りしていたのだ。
Fripp先生は良いボーカリストと組むと素晴らしい仕事を残す
これまで敬愛するRobert Fripp先生がかかわってきたアルバムを聞き続けて、一つの事に気がついた(いや思いついたと言うべきか)。Fripp先生は良いボーカリストと組んだ時に、とても良い仕事を残してきたという事だ。
その説を証明しようと、これまでDavid Bowie、Daryl Hallとの仕事についてこのブログで取り上げてきた。今回はDavid Sylvianの番だ。
David SylnianとRobert Frippのつながり
Fripp先生はこれまで色々なミュージシャンの作品に参加したり、共作してきた。そのどれもが素晴らしいのだが、その中でも最高の成果を残したとオレが考えているのが、David Sylvian & Robert Frippだと思う。
Fripp先生とDavidさんのつながりは、Davidさんの1986年に発表されたソロアルバムGone to Earthにまでさかのぼる。Fripp先生はそのアルバムで、控えめにギターを弾いて、アルバムに華を添えている。同じDaivdでもBowieの時は大違いな対応だ。
それをきっかけに彼らの交流が続いていたようだ。その頃のDavidさんはゲオルギー・グルジェフ(神秘主義思想)にも傾倒していたらしい。グルジェフと言えばFripp先生(Fripp先生は70年代中期に、グルジェフの教えを学ぶ為に出家して2年ほど音楽業界から離れている)がすぐに頭に浮かぶ。
Fripp先生がDavidに教えたのか、それともグルジェフの神秘思想に傾倒するゆえにFripp先生に近づいたか、そのどちらかは解らないが、2人の間にそういうつながりがあったのは驚きだ。
David Sylvian & Robert Fripp結成

そんな2人がグループを作ったと聞いてオレは驚いた。Wikipediaの記述が正しければ、もともとはFripp先生がDavidさんにKing Crimsonへボーカルとして参加する事を提案したという。Davidさんはその提案は却下したが、代わりに2人でコラボする事を逆提案したという。Fripp先生は、Daryl Hallに続き、2度も素晴らしいボーカリストにKing Crimson入りを断られたわけだ。
その成果がすぐに現われた。1992年春に、David Sylvian & Robert Frippとして突如来日する。ツアータイトルは「The First day」だった。これは後に出る彼らのアルバムのタイトルと一緒だ。
この時オレは1992年3月7日のを観る事が出来た。前座はCalifornia guitar Trio。その時のバンド編成はDavidさんとFripp先生に、チャップマン・スティックのTrey Gunnを加えたトリオ編成でコンサートを行った。ドラムレスなので、Davidさんの世界とFripp先生のフニャフニャサウンドががっしりと組み合わさったとても耽美的な、静かなコンサート(時にギターが雷鳴のようにうるさく響く)だったことを覚えている。
キーボードに向かい、気だるげに歌うDavidさんに、Fripp先生のギターがからむ、音による妖術がホールに響いていた。Fripp先生のギターはボーカルをとても引き立てる。彼は単なるヘビーなリフを弾くだけのギタリストじゃないのだ。いやFripp先生のギターが、卓越した声をもつボーカリストを必要としたのだ。この時のステージはそれを確信させた。
事前に何の情報もなかっただけに、こんな静かな環境音楽のようなステージになるとは予想もしていなかった。Davidさん目当ての女性客が多いように思えたけれども、あまりにも静かなステージで、多くの人が眠気と闘っていたようにオレには思える。
その静かなステージに、オレは大興奮して見とれていたのだ。というのもこれがオレにとって始めて見る生Fripp先生だった。日本の辺境の地から上京して6年目目、ついに一番憧れのFripp先生のお姿を生で見ることが出来たのだから。
この時期どんな演奏をしていたのか、再確認してみたかったのだが、公式には一切映像も音も作品化されていない。唯一見つかったのはyoutubeで、この時の音のみがアップロードされていた。嘆美だ。そしてエネルギーにあふれているステージだった。これは誕生だ。
■youtube:「The First day tour 1992」1992年3月6日のオーチャードホールでのライブ。
アルバムThe First day発表
その1年後この2人の活動の成果が、アルバムThe Frist dayとして実を結ぶ。リリースは1993年8月10日。ボーカルとギターの録音はニューオリンズのKingsway Studiosで行われ、その後ニューヨークで追加録音や編集を行った。2人ともイングランドの人なのに、アメリカ録音というのが面白い。
このアルバムは当時3種類リリースされていて、2枚組のLP、通常盤CD、箱入り+8枚の写真付盤が売られていた。オレは箱入りのを入手して今も大事に保存している。
収録曲は全7曲。
1 God’s Monkey (David Bottrill, Fripp, Gunn, Sylvian) 4:58
2 Jean the Birdman(Sylvian) 4:09
3 Firepower(Sylvian) 10:25
4 Brightness Falls(Sylvian) 6:05
5 20th Century Dreaming (A Shaman’s Song) 11:50
6 Darshan (The Road to Graceland) (Bottrill, Fripp, Gunn, Sylvian) 17:17
7 Bringing Down the Light (Fripp) 8:31
このアルバムは、てっきり前年のライブで見たような、環境音楽のような作品だろうと思っていた。ところが聞いてびっくり、これがダンサブルで非常に素晴らしい作品だった。2人の個性ががっちりと組み合わさり、奇跡的なアルバムが誕生した。耽美とシャーマン的な繰り返されるビート。それが相まって、聞くドラッグとでも言うような神秘的、耽美的な作品に仕上がっていた。
Fripp先生もギターを、自由自在に、そして縦横無尽に弾きまくっている。そしてDavidさんの静謐なボーカルがギターとリズムに絡む。そして生まれた呪術空間。それがThe first dayだった。このアルバムには西洋魔術を音にして封じ込めた様にオレには思える。
Spotifyにはこのアルバムが無かったのは残念。
■youtubeへのリンク:アルバムThe First day
そして再来日「The road to graceland’93」ツアー

そして強力なアルバムを従えて、彼らは再来日した。ツアータイトルは「The road to graceland’93」。オレが観たのは1993年10月16日の公演だった。この時のサポートギターはMichael Brookで、彼は前座も勤めた。
この時のツアーはアルバム同様ドラムも入った編成でライブが行われた。アルバムではJerry Marottaがドラムを叩いていたが、このツアーではその後再々結成されるKing CrimsonのPat Mastelottoが努めていた。と言う事でこの時のツアーメンバーがそのまま、90年代Crimsonのダブルトリオの半分と言う事になる。もう一つのトリオががここに加われば、DavidがボーカルのKing Crimsonの誕生になるのに。とても残念だ(←しつこい)。
この日本でのライブは、後にビデオ化された。非常に素晴らしいライブだったのだが(余計な映像効果が無ければさらに良かったのだが)、残念ながら現在DVDやBD化されていないので目にすることが出来ない。ずーっと再発を待っているのだが、なにか権利関係で問題があるのだろうか?。
このときのライブは件のビデオがyoutubeで公開されていたので、リンクを張っておく。
■youtubeへのリンク:「The road to graceland’93 live in Japan」
ライブアルバム「Damage」は2種類ある
この時のライブツアーは、「Damage」というライブアルバムでもリリースされている。1993年12月ロンドンでの公演を収録したものだ。このCDも通常版と、限定版豪華版が存在していて、オレは限定版を入手する事が出来た。限定版は立派な紙の箱に入っていて、ディスクの記録面は金箔(12K)、40ページほどのブックレットがつく豪華なものだった。現在このデラックス版はとても希少で、ときたま中古品が出品される事がある。見かけたら即購入する事をお勧めする。以上はFripp先生がミックスした1994年盤の話。
そして最近知ったのだが、このDamegeは2000年にDavidさんがリミックスし直したもので再リリースされている。曲順が上記とは異なっており、Dashanがカットされた代わりに、Jean the birdmanが入っている。もちろんアルバムジャケットも異なるものが使われている。
ひょっとしてDavidさんはFripp先生とのコラボが気に入らなかったのだろうか? そのためこの時の映像のDVD化を拒んでいるのだろうか? 誰か何か知っている人がいたら教えて欲しいと思う。
Fripp先生のギターは良きボーカリストと組んでこそ活きる
オレはFripp先生は、良きボーカリスト、そして良きメロディーメーカーと組んでこそ、彼のギターの真価が発揮されると考えている。Adrian Blewは素晴らしいミュージシャンではあるが、卓越したボーカリストではなかった。メロディーメーカーとしても一流とは言えない。
なので80年代、90年代Crimsonは面白い音を作ってはいるけれども、素晴らしい楽曲を残す事は出来なかった。多くのCrimsonファンを敵に回すようだが、90年以降のCrimsonはつまらないのだ。リフばかりでメロディーが無い。
Fripp先生の先進的なリフばかり目立って、素晴らしいメロディーの曲は80年代以降皆無なのがとても残念に思う。うっとりと聞かせる曲も存在しないのだ。それだけにDavid SylvianがもしKing Crimsonのボーカルだったらと、オレはとても残念に思うのだ。彼がCrimsonにいたら、どんな劇的な音を生み出していたのだろう?
残念ではあるけれども。何時の日かまた、物まねオウムじゃない素晴らしいボーカルが居るCrimsonを聞いてみたい。『Fripp先生のギターは、良きボーカリストと組んでこそ生きるのだ』といったら言いすぎだろうか?
物まね上手のオウムボーカルじゃ、Fripp先生のギターがちっとも生きてこないのだ。Fripp先生のギターには、それに見合う声が必要なのだ。このSylvian Frippで聞ける、ボーカルとギターの緊張感溢れる真剣勝負を聞けば、誰もが納得すると思うのだ。
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