デビッド・ボウイは、ロバート・フリップと云うモンスターを使いこなす Scary monsters / David Bowie(1980)

sponsor link

今なら「初月基本料金0円から」「最大9,988円 OFF」など

デビッド・ボウイ スケアリーモンスターズ scary monsters david bowie

デビッド・ボウイが証明 良いボーカリストじゃないと活きないRobert Frippのギター

King Crimson、そしてRobert Fripp先生の音楽を長年聴いてきたものとして、一つ気がついた事がある。それはBobさんはギタープレーヤーとしては卓越しているのだが、音楽家としてはそれほどたいした事がないという事に。

60年代からBobさんが関わってきたものを聞き続けて、はっきりしている事は彼はギターリフの人であって、メロディーメーカーではないと言う事だ。彼が残した数々の素晴らしい作品は、そのどれもが卓越したメロディーメーカーの他のミュージシャンと、しかも優れたボーカリストと一緒に作品を作った時のみに生み出される。

こんな事を主張すると、同士であるCrimsonファンから、生きたまま枯れ木にくくり付けられ、スターレス高島から火をつけられそうだが、あえて言おう。

70年以降のCrimsonに、陶酔するような素晴らしい曲があったら教えて欲しい。いや無い!

Bobさんは素晴らしいボーカリストと一緒じゃなきゃ、素晴らしい作品を残せないのだ。それは今のCrimsonを見ればはっきりしているじゃないか。機械のようなリフばかりで、面白くも何ともない。オウムのように物まね上手のボーカリスト。こんな風に云うのは悪いけれども。

と言う事で、Bobさんは素晴らしいボーカリストと一緒じゃなきゃ、素晴らしい作品を残せないのだ。そんなわけで今回はDavid Bowieとの仕事を検証してみようと思う。

David Bowieとの素晴らしい作品

Fripp先生がCrimson以外でやってきたお仕事で一番評価されているのは、やはりDavid Bowieとの作業だろう。Davidについては熱烈なファンが多いので書く事が憚られるが、まあ、オレの感想ということで許してくれ。って、悪口は書かないが。

数年前にKing Crimsonがニューシングルを出した。それは「Heroes」。いわずと知れたDavid Bowieの代表曲の一つだ。


そのCrimsonのHeroesを早速聞いた。演奏はいうまでもなく素晴らしい。なんせギターは本人が弾いてることだし。ただ問題はボーカル。カラオケで物まねして歌っているんですか? と言いたくなる(←Crimsonの長年のファンなので辛口評価。)

やはりどうしてもDavid Bowieの声と比較してしまう。この曲はDavidの声じゃないと、はえないのだ。つくづく彼の声は神の与えし特別な声だと思う。色、艶、輝き、響き、質感、表現力、魅力、全てにおいて傑出したボーカルだと思う。

そして確信したのは、Bobさんのギターはやはり、素晴らしいボーカルとの組合わさることで真価を発揮するのだ。

Scary MonstersはRobert Frippの最高の仕事の一つ

オレが思うにBobさんがDavidと関わって最高の仕事をしたと思うのは、「Scary Monsters」と言い切る。このアルバムはとにかく強力だ。本来ならポップなロックアルバムに仕上がっていたであろう作品が、Robert Frippという劇薬を入れる事で、見上げるような遥かな高見のアートロックに昇華した作品だとオレは思っている。

Scary Monstersについて


リリースは1980年9月12日
録音は1980年2月から4月、大部分はニューヨークのPower Stationにて。
曲目は、
1 It’s no game(pt.1)
2 Up the hill backwards
3 Scary monsters(and super creeps)
4 Ashes to asshesFashion
5 Fashion
6 Teenage wildlife
7 Scream like ababy
8 Kingdom come
9 Because you’re young
10 It’s no game(Pt.2)

created by Rinker
ワーナーミュージックジャパン
¥1,340 (2024/03/29 10:47:04時点 Amazon調べ-詳細)

曲解説

1曲目 It’s no game。この曲は本来、アルバム最期におさめられたバージョンのように、しっとりとした曲だったと思う。ところがBobさんと云う毒薬を入れてしまった為に、Davidも最高のハイテンションで対峙しなければ、曲のバランスが取れなくなってしまった。

曲の冒頭からBobさんは何の遠慮もなく好き勝手にギターを弾きまくっている。リードギターから、Fripp節炸裂のソロまで、曲全編にBobさんのギターが鳴り響く。もう終末の日に鳴り響くラッパのごとく。あまりのテンションの高さのため、曲の最期にDavidは発狂したかの様に、鳴り響くBobさんのギター音に「黙れ」と叫んで曲が終る。

2曲目 Up the Hill Backwards
この曲もBobさんのギターが響かなければ、ただの良質なポップ・ロック・ソングだ。だがBobさんのギターが入れば、そんな予定調和は物の見事に破壊されてしまうのだ。Bobさんのギターが入った部分と、そうじゃない部分の曲の雰囲気の違いがとても面白い。

3曲目 Scary monsters
もうScary monstersとはまさにBobさんのギターの事だ。もう冒頭から遠慮なく暴走が始まる。いやBobさんとDavidの真剣勝負が始まる。もしもこの曲にBobさんのギターがなければ、恐ろしい怪物もただのかわいいチワワになっていただろう。それほどBobさんのギターの貢献度は高い。

1990年のDavid Bowieの来日公演でもこの曲を歌っていた。その時のギターはAdrian Belewだった。高まる期待とは裏腹に、そのステージにはモンスターは現われず、かわいらしい子犬がじゃれているだけだった。がっかりした事を今でもはっきりと覚えている。それほどBobさんの弾くギターにはマジックがあるのだ。一生懸命弾いていたAdrianには悪いのだが。

4曲目 Ashes to ashes
残念ながら、幸い? この曲ではBobさんはギターを弾いていない。なので安心して聞いていられる。実にポップで良い曲じゃないか。アルバムにはこうした、緊張と弛緩が必要なんだ。Davidはよくそこのところを判っていらっしゃっている。さすがだ。

5曲目 Fashion
もう冒頭のシーケンサーのリズムの部分から、Bobさんはギターを唸らせて準備運動を始めている。1曲休んでいるので、もうエネルギー全開。ここでもBob節炸裂のギターが全編に渡って響いている。このギターさえなければと思うむきもあるかも知れない。いやこのギターがなければただのポップ・ソングになってしまうじゃないか。Davidがそんな安直なものを作る訳がない。

6曲目 Teenage waildlife
これまた良質なポップ・ロックなのだが、Bobさんのギターが入った瞬間、曲の表情が変わる。オレなんかその瞬間がもう癖になりそうだ。良質な曲が、ぞくぞくする曲に変わるのだ。Bobさんらしいけれども、美しい音色のギターソロにしびれてしまうのだ。

7曲目 Scream like a baby
Bobさんお休み。Carlos Aromourがギターを弾いている。良い曲なんだけど、Bobさんのギターがなければなんか物足りない気がするのは、ちょっとオレがイカレている証拠かも知れない。

8曲目 King dom come
Bobさんのギターはここまで。さすがScary Monster師匠も、1日集中してギターを弾いて疲れてしまったんだろう。ここでのBobさんのギターは控えめ、抑え目。後のSound Scapeを思わせるギターの音色も聞こえてくる。

9曲目 Because you’re young
この曲ではPete Townshendがギターを弾いている。悪い曲じゃが、なんか物足りないと云ったら怒られるか。

10曲目 It’s no game Pt.2
Davidさんは親切にも、Bobさん抜きのこの曲を入れてくれている。どうだBobさんのギターがなければ、こんな地味なポップ・ソングになってしまうんだぞと言わんばかりに。

Robert Frippを飼いならすDavid Bowie

ポップスファンにとっては、なんだこの雑音のようなギターは? と思われたかも知れない。いや迷惑なのかも知れない。もう折角のDavidの曲に何でこんなノイズを入れるんだ? と怒り心頭かも知れない。

だがそれこそDavidの狙いなんだとオレは思う。「こんなギターがなければ良いのに」なんて声を聞けば、Davidはきっと「ニヤリ」としているに違いない。

あらためてScary Monstersを聞いて見ると、やはりDavidはアルバム一枚に完璧な自身の世界を作り上げている。何もかも完璧なのだ。ところがその完璧過ぎる音世界に、あえて異質なRobert Frippのギターを入れる事で、その完璧な音世界をあえて崩壊させている。

折角の良質なポップ・ソングが、Bobさんのあまりにも異質なギターが加わえる事で、楽曲をモンスターに変貌させたのだ。Robert Frippのギターは、David Bowieの音世界とあまりにもかけ離れ過ぎて、不調和を起こしている。ところがその不調和とDavidの世界がバランスを取ると、より一層高い次元でで音が均衡を取る。その結果出来たのがScary monsters。良質なポップアルバムが、恐ろしいほどの高見に昇った作品世界に昇華してしまったのだ。

やはりDavidはモンスターだとオレは思う。だからこそ、モンスターの扱いがとても上手なのだ。こうして極く普通のポップアルバムが、恐ろしいモンスター級のアルバムへと変貌してしまった。これこそ驚異のDavidマジックだとオレは思う。

ここに聞ける音世界は超絶だ。こんな高度な技をさらりと簡単にやってのけられるのは、ロック界ではDavid Bowieただ1人だと思う。DavidとRobert、この2人がバランスを取る様はまるで、陰陽がバランスを取って中庸になる様を見るようだ。ロック陰陽の素晴らしい見本がここにある。

アルバムタイトルは、Scary monsters。複数形である。つまりこれはDavidとBobさんの2人の事を差していると云えば考えすぎだろうか?

それにしてもDavidは懐がとてつもなく広い。いくらFripp色全開でギターを弾こうが、このアルバムはFripp & Bowieにならない。それはDavidの魔力の方が上回っているからだ。

それにしてもFripp先生は良いボーカルと組めば、とても良い仕事を沢山残している。近々このギターモンスターにすっかり取り込まれてしまった、ボーカリストについて書こうと思う。

リンク:Scary Monsters wikipedia english

リンク:スケアリー・モンスターズ wikipedia日本語 こちらには特に読むに値する情報がない


🎶ここまで私のブログを読んで頂き有り難うございました。

記事をシェアして頂けたらとても嬉しいです。


コメントを残す