フィリップ・K・ディックの描いたオートファク(自動工場)の悪夢が今ここに実現!

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フィリップ・K・ディックは食う為に大量の短編小説を書き散らした

フィリップ・K・ディックと言えば、彼の書いた作品を原作に多数の映画が作られている。それら原作はどんなものかと言うと、その殆どは50ページから100ページほどの短編小説だ。優れた作家と云うのは、優れた短編作家だったりするわけだ。やはりオレが敬愛して止まない半村良さんも、実に大量の短編小説を書きまくっていた。食う為に大量生産し続け無ければならないという当時の事情も在ったんだろう。

フィルが残した短編小説を簡単に数えてみると、軽く120作品を越えてしまう。アイディア一発勝負の話も多いけれど、膨らませれば長編になりそうなものも多い。短編小説執筆のピークは、1950年から1960年の頃で、ペイチェックやトータルリコールと云った作品の原作もその頃に書かれている。古い作品だともう70年も前に書かれたものなのに、21世紀の今映画として蘇っている訳だ。

オートファク(自動工場)

オレはフィルの作品は手当たり次第貪るように読んでいるので、短編集だけでも軽く20冊近く本棚に並んでいる。未読の作品が含まれて入れはつい買ってしまうので、かなり重複してはいるのだが。その短編集の中で1番気に入っているのが、かって早川文庫で出版されていた「時間飛行士へのささやかな贈り物」だ。これはオレが最初に買ったフィルの短編集で、この30年間に何度も読み直している。実に味わい深い作品ばかり収録された短編集だ。現在はこの短編集は絶版になっているのがとても残念だ。その代わり再編集されて、別の名前で今売られている。

この「時間飛行士へのささやかな贈り物」の中でオレのお気に入りベスト3に入る作品が「オートファク」。今回は「オートファク」に付いて一寸書いてみようと思う。

オートファクが発表されたのは1955年。50ページほどの短い作品だが、それだけに何とも恐ろしい悪夢的世界がぎゅっと詰っている。

舞台は核戦争後の荒廃した、未来の地球だ。生き残った人間はそんな世界で細々と、何とか生抜いている。だがそこに蠢くのは人間だけじゃない。機械もたくましく生抜いているのだ。機械(オートファク=自動工場)は、生産のための生産に忙しい。地球に残された乏しい資源を漁っては、需要の無い製品を作り続け、生き残った人間に勝手にどんどん供給する。

このままオートファクを放っておけば、地球の資源は掘り尽くされて枯渇してしまう。そう懸念した人間達は、何とかしてオートファクの自動生産を止めようと奮闘する。オートファクをこのままにしていれば、人類復興に必要な資源まで、収奪され尽くしてしまうのだ。更に悪い事に、独立した各オートファク同士が、人間そっちのけで資源の奪い合いの戦いまで始めてしまう。いったい人間はオートファクに勝ち目があるのか?(オチは読んでのお楽しみという事で) そんな機械に支配される社会の悪夢がここには描かれている。

21世紀、オートファクの悪夢が現実に!

フィルは70年前に機械が暴走する社会の悪夢を描いた。あくまでも未来にそんな事が起きれば恐ろいだろうと言う創造力がそうした物語を作った訳だ。ところがそんな悪夢の世界が、21世紀になり本当に実現しそうだ。

製造業の国内回帰は定着するか 自動化で低コスト

安い労働力をあてにして海外に生産工場を設けていた日本企業が、日本国内に工場を戻す動きが加速していると云う。地域貢献も、思想も何も無いゼニゲバ企業とその経営者たちだ。

中国だベトナムだと、安い労働力に引かれてどんどん工場を海外に移転してきたゼニゲバ企業。ところが、それらの国が日本と違いどんどんと経済成長するに伴い、人件費が急騰していった。もう海外で生産するメリットが無くなってきたと云う。

ゼニゲバ企業の考える事は、やはりゼニゲバ。儲けの事しか頭に無い。このクソ企業達は、ただ日本に日本回帰したじゃなかった。いまこうした工場では、生産の自動化が急速に進んでいると云う。国内生産に切り替えた企業は、生産現場の自動化を一気に進め、もう以前のように労働者を必要としなくなったと言う事だ。殆ど無人の工場で、機械だけが黙々と製品を製造する、そんな工場が日本にどんどんと増えてづけているのだろう。

自動化が進みコスト削減で効率良く大量生産。ゴミのような商品であふれ返るこの世の中だ。だけども、誰がその商品を買うんだ? 工場から労働者を排除してしまえば生産効率は良いだろう。だがその労働者はただ働くだけじゃない。消費者でも有るのだ。じゃあ労働者を排除してしまえば、いったい誰がその無人の工場でせっせと作られる商品を買う事が出来るんだ?

誰も買う者がいない世界で、工場だけが24時間煌々と明かりをつけて、どんどんと製品を生産する。街には失業者があふれるが、商店の陳列棚には誰も買う事の出来ない商品があふれ返っている。そんな悪夢がオレの頭に浮かんでくる。

ここに来て急速にベーシックインカムの話しが世界中で話題になっている。生産しても誰もが貧乏で買えないっていうのなら、おカネを配ってしまえばいいと言う短絡的な意図がそこに隠されている。ベーシックインカムとは、単に福祉的側面から出てきたものじゃないのだ。産業界の切なる願いと言う訳だ。この世はもう社会主義になってしまったんだろう。

生産の為に人間がいるんだか、人間の必要とするから生産が在るんだか、もう分け分からない。21世紀のオートファクの作り出す過剰な生産を消費する為に、政府が国民に金を配って買わせる。これ以上の悪夢は、流石のフィルも想像出来なかったと思う。

もうこうなりゃ、人類なんて滅んじゃった方が話が早いんじゃないの?

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