2021年ポッシュ・ポップ Posh pop / Toyah

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posh pop

2021年に最も聞いたアルバムポッシュ・ポップ


2021年も相変わらず、新譜はあまり聞かなかった。けれども数少ないその中からベストアルバムを選べば、迷い無くEric Claptonさんの The lady in the balconyをあげる。そして2番目がToyahさんのPosh Popだ。

2番目とは言うもののEricさんの新譜がなければPosh Popがダントツで1番だった。再生回数も1番。2021年に最も聞いたアルバムがPosh popだった。そんなPosh Popについて今さらながら記事にしてみようと思う。

このアルバムについて以前からレビューを書こうと思っていたのだが、何が良いのかうまく説明が付けられなかった。「これは良いアルバムだ。みんな聞け!」じゃまともな投稿にはならないからね。

Toyahさんの16枚目のスタジオアルバムPosh Pop


Posh popはToyahさんの16枚目のスタジオアルバムになる。リリースされたのは2021年8月27日。物理的媒体にはいくつか種類があって、CDは通常版の他に、Toyahさんのサインの複製付(限定版)、DVD付(これまた限定盤)があった。アナログレコード(限定版)でも発売されていて、盤の色は灰色だ。正直LPで買うべきだったと思う。

プロデューサーは、ここ10年ほどToyahさんと組んでいるSimon Darlowさん。作曲もToyahさんとSimon Darlowさんで行っている。ちょっと調べてみて驚いたのだが、SimonとToyahさんのつきあいは、1983年までさかのぼる。当時のToyahさんのバンドメンバーの中に、キーボード奏者としてSimonさんの名があった。

アルバムの参加ミュージシャンは、ギターとベース、キーボード、チェロがSimon Darlowさん。そんで追加のギターがBobby Wilcoxさん。BobbyさんはMr. Toyah Wilcoxと呼称されることもある世界的超有名ギタリストだ。最近彼は年がいもなくモヒカン刈りにしたことでも知られている。ドラムはJeremy Staceyさん。その他数人のお手伝いでこのアルバムが作られた。

Posh popはイギリスのチャートでは最高22位を記録していて、Toyahさんのアルバムとしては、1982年以降最も高いチャート順位を記録している。そしてイギリスのアルバム年間売り上げランキングでは6位になったと云う。良い内容のアルバムなので当然の結果だろう

収録曲は10曲
1 Levitate
2. Zoom Zoom
3 The Bride Will Return
4 Space Dance
5 Barefoot on Mars
6 Rhythm in My House
7 Summer of Love
8 Monkeys
9 Kill the Rage
10 Take Me Home

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唯一無二のToyahさんこそロック


とあるインタビューで最近の音楽について聞かれたRichie Blackmoreさんは、“この30年間に何一つ新しいものなんか生まれなかった”と答えた。

オレもその通りだと思う。良い曲は沢山生まれてきてはいるが、もうあたしは今後、画期的な音楽なんて聴く事はないのだろうと思う。まあ子ども時代にそうした衝撃を沢山感じて育ってきたので、これ以上は贅沢と言うものだろう。

だけども時折、これは面白いと思う音に出会う事が有る。この10年間では、Posh Popがその筆頭だ。Popと言う言葉とは裏腹に、中々ハードなロックアルバムに仕上がっている。ギターのリフが良い。そしてそのリフにからむToyahさんのメロディー、そして歌声がなんとも不思議な、時代を超えた音を作り上げている。

他の誰にも真似の出来ない作品を作ると言う事がとても難しい時代に、それをToyahさんはいとも易々と行っている。ただハードなギターが鳴ってさえいればロックじゃないのだ。

そんなロックもどきの中で、Posh popの音はまさにロックそのものだと思う。誰にも似ていないと言う事は、とても大事なんだ。ロックとは世界であなたしかつくれない音。そんなまがい物だらけの世界で、唯一無二の音を作れると云う事はスゴイ才能だと思う。

このアルバムを聞いていて面白いのは、なんだか聞いた事のある歌詞がそちこちにちりばめられている事だ。The Doors、Jimi Hendrix、Deep Purple、etc。あたしの気のせいかもしれない。いや意図的に引用したのかもしれない。

そして音もこれはあの曲の引用じゃないのか? というものがある。一つだけ例を挙げると、Rhythm in my houseはThe whoのWon’t get fooled againに意図的に似せている。パクったのじゃなくて、わざと真似しているのだ。イントロのキーボード、そしてギターのリフは明らかにPete Townshendを意識している。他の曲じゃそんなギターの弾き方をしていないのだ。そんな遊びが随所に隠れているのがPosh pop。遊び心満載。そんなToyahさんの仕掛けを探すのもこのアルバムの魅力だと思う。

こうしたロックの教養があればより楽しめる、だからただのpopではなくposh popなんだろう。

Robert Fripp先生のギターは良いボーカルととても相性が良い


このToyahさんのアルバムで聞くRobert Frippさんのギターを聴いていると、ももういい加減King Crimsonという呪縛から彼は解き放たれても良いのではないかとあたしは思ってしまう。

それぐらいここで聞けるFripp先生のギターは自由奔放に、そして想像力をかき立てる音色を奏でている。こんな音がKing Crimsonで聞けるのであれば、オレも未だに今のKing Crimsonに夢中になっていただろうと思う。

70年代Crimson解散の後、Fripp先生抜きでバンドを再建する話もあったそうだ。ところがレコード会社から拒否されてしまったと云う。Fripp先生はきっと一生Crimsonを背負う業を負ってしまったのだろうと思う。残念だ。Crimson以外で聞けるFripp先生のギターがすごく良いだけに。

このブログでたびたび主張している事なのだが、Fripp先生は良いボーカリストと組んでこそ良い作品が残せるのだ。その証明の一つがPosh Popだと言いたい。Toyahという、とても素晴らしいボーカリストに合せて、Fripp先生が好き放題ギターを弾いた結果Posh Popは数段上の仕上がりになった。Fripp先生のギターは最高の音楽的調味料になるのだよ。

変化自在のボーカルにあわせて、Fripp先生は縦横無尽にギターを弾く。時にハードに、時にメロディアスに。実生活でも奇人変人の良いコンビネーションの2人は、音楽面でも相性ばっちりという事をこのアルバムで見せつけている。

長年のロックファンに新しい音を それがPosh pop

もはや何も新しいものは生み出さない、年寄りの聴く音楽ジャンル=ロックに、この2人はまだ何か新しい事が出来ると云う事を証明しようとしているようにあたしには思える。

かつてガキが聴く音楽が、今じゃ年寄りの聴く音楽ジャンルになってしまった。といって単純なロックンロールなんて、昔のアルバムでも聞けばいいんだ。今を生きる老人が作るロックは、より洗練されて、上級なものじゃなきゃならないのだ。それがPosh Popの意味なのでは無いかとあたしは思うのだ。

何はともあれ、ロックンロールだけがロックじゃない。複雑なだけがプログレッシブロックじゃない。そんな形式の束縛を離れて作り上げた、進歩したロックがPosh Popなのだ。これぞ21世紀のプログレッシブだと思う。

若者には若者の音楽が必要だが、おじさんにはおじさんにふさわしい、新しい音が必要なのだ。いつだってノスタルジアに浸っていたいわけじゃないのだ。

それがPosh Popなのだ。

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