ジョイ・ディヴィジョンのスティル2007リマスターには未発表ライブCDが付いている!  Joy Division still

sponsor link
joy division still ジョイ・ディヴィジョンのスティル
本当にボール紙で自作してみたら、そっくりに出来たw


ジョイ・ディヴィジョンのスティルとはどんなアルバムか

Joy DivisionのStillはU.Kで1981年10月8日に発売された。バンド活動停止後に良く発売されるアウトテイク集+未発表ライブといった体裁のダブルアルバムだった。

オレはこのアルバムを1985年に初めて聞いている。当時オレは日本の流刑地・網走の高校に通う生徒だった。網走みたいな、酷いミスをして左遷でもされなければ来る事も無いような街のレコード屋でも、当時何故かJoy Divisionの全アルバムが在庫していたのだ。

Stillのジャケットはとても簡素だ。灰色のボール紙にFactory Labelのロゴマークとアルバム名が白インクで書かれただけだ。とてもそっけのないジャケットだった。こんな小学生の工作のようなアルバムジャケットは、これまで他には見た事が無い。

Stillの収録曲

LPで云うなら1枚目は1stアルバム制作時などに録音されて、ボツになった曲が納められている。実際に発売された1stアルバムに収録された曲に比べると、ずいぶんパンクっぽい曲も多い。だがやはりこの時点でも、他のただのパンクバンドとは一味も二味も違うダークな曲ばかだ。

Joy DivisionはSex Pistolsに触発されて結成されたバンドなのだが、何故かパンクロックからかけ離れた音になってしまっているのが面白い。音は攻撃的だ。だがJoy DivisionはSex Pistols等と違い、その攻撃の矛先は外ではなく内に向かったゆえに、この様な音になったのではないだろうか。

そしてLPの2枚目は1980年5月2日、バーミンガム大学で行われたライブ演奏が納められている。実はこれがJoy Divisionの最後のライブになってしまった

LPのStillは云うまでも無く散々聞いたアルバムだったが、デジタルの時代に入りCDでも買い直した。LPでは2枚組だったのだが、CDでは1枚にまとめられていた。

CD化に際して、残念ながら2枚目A面の最後の曲24hoursがカットされている。アルバムジャケットには曲名未記載ではあるのだが、このシークレットトラックは良かっただけに残念でならない。

Still は2007年リマスターされる そしてCD2枚組デラックス版が出ていた

そしてStillは2007年にremasterされて発売されている。そのことに気がついたのは2018年の事で、ただのremasterだとばかり思っていたら、なんと再び2枚組のアルバムになっていた。しかも2枚目は未発表のライブが収録されている。1980年2月20日にHigh Wycombe Town Hallで行われたライブだ。これは買わねばなるまい。そんな訳で、オレはStillというアルバムをこれまで合計3度買った事になってしまった。

1枚目のオリジナルStillは、最新の技術でremasterされているだけあって、音の輪郭が非常にくっきりとした印象がある。以前のCDに比べると、音の厚みが増し、よりダークな印象がする。音の分離が良くはっきりくっきりで、古くささを感じさせない仕上がりになっているといえば大げさだろうか。

created by Rinker
London/wea
¥2,149 (2024/04/20 07:19:03時点 Amazon調べ-詳細)

デラックス版に収録された1980年2月20日のライブ

そして問題は2枚目のライブが収録されたCDだ。これが非常に生々しくて良い。たぶん元の音源は客席録音のブートレグなんだろう。演奏に紛れて時折客の声や口笛などが入り込んでいる。ボーカルは最初から最後まで非常に曖昧模糊として、くっきりしていない。それだけに、録音としてはちっとも良くないのだが、ライブハウスで聞くJoy Divisionのライブの雰囲気がとても良くでていると思うのだ。

もう彼らのライブはこうした残された音源やビデオでしか絶対に体験する事ができない。こんなアルバムを聞く事で、少しでも彼らのライブを体験しているような気分が味わえる。これはそんなアルバムだ。

Live at High Wycombe Town Hall 20, Feb, 1980収録曲

1 The Sound Of Music 4:19
2 A Means To An End 3:57
3 Colony 4:06
4 Twenty Four Hours 4:20
5 Isolation
6 Love Will Tear Us Apart 3:14
7 Disorder 3:13
8 Atrocity Exhibition 5:58

以下はサウンドチェック
9 Isolation (Soundcheck) 3:00
10 The Eternal (Soundcheck) 3:36
11 Ice Age (Soundcheck) 3:16
12 Disorder (Soundcheck)  3:14
13 Sound Of Music (Soundcheck)
14 A Means To An End (Soundcheck) 3:45

各曲のオレの感想を書いておこう

1 The sound of music ベースもギターも尖りまくり、非常に攻撃的に演奏されている。コーラスも非常に粗暴で良い。


2 A means to an end ギターやベースのリズムが狂うのが逆に面白い。彼らはIanに合せて演奏しているのだ。

3 Colony まるでパンクバンドの様にがなり立てるIanが素晴らしい。

4 アルバムの演奏と違いイントロ後半から曲が急加速する。これは暴走と言ってもいいと思う。Ianのボーカルは非常に曖昧模糊。ギターの音量が控えめだと言うのに、Ianがまるで濃い霧の向こうにいて歌っているようだ。

5 Isolation もうイントロからベースが走りまくり。暴走するベースに引きずられ、とても性急な演奏だ。Barnardはここではシンセサイザーを演奏していると思うのだが、なんだか危うげな演奏。

6 Love will tear us apart これまた性急だな。てんでバラバラに演奏している感がとても強い。これはやはりベースとドラムがしっかりとしたビートを作る気が無んだろうと思う。このバンドのベースはリード楽器だし。

7 Disorder 正に曲名通りの無秩序な演奏。何故ここまで性急に演奏するのだろうか? もうとにかく早く演奏して終らしてしまいたいとでも思っているのでは無いかと思ってしまう。そしてIanは全くまともにこの曲を歌えていない。こではIanのボーカルも止まり気味で、ひょっとすると歌詞を忘れてしまい出てこないのだろうか。曲の最後の絶叫だけがちゃんと歌えている状態。こんな酷いアンサンブルなのに、ちゃんと曲が終るのが面白い。

8 Atorocity exhibition 渾沌渾沌。曲後半のIanのシャウトが素晴らしい。

9 Isolation サウンドチェックだからといって手抜きは無い。相変わらずの性急で不安定な演奏。ベースは安定して走り気味。これぞJoy Divisionといった感じだ。

10 Eternity 安定して不安定な演奏。このバンドはいったいドラムを何だと思っているんだろうか。ちゃんとドラムのリズムに合せて欲しいと思う。いや、みんなIanに合せて演奏しているんだね。そして唐突に演奏が終わる。

11 Ice age 歌い出しは良いのだが、サビの部分でIanは全くふざけているのか、酔っ払いのカラオケのような調子っぱずれの歌唱がおかしい。こんなよれよれの、氣の抜けた腑抜けのようなIanの歌声は他では聞いた事がない。これは笑える。知床のスナック場末から漏れてくるおっさんの歌のようだ。

12 Disorder 先ほどのライブより、このリハーサルの方がよっぽど出来が良いのは何故なんだろう。Ianもちゃんと歌えているぞ。

13 sound of music リズムが狂いっ放し。どうしてこれでアンサンブルが出来るのか不思議でしょうがない。いやこの人たちは、本当に上手に演奏してやろうなんて思っていないんだろうと思う。そういう価値観とは全く別の価値観で、これらの曲を演奏しているんだろうと思う。この渾沌演奏は、確信を持って演じている。

14 a mean to an end もう良いね良いね、この混沌模糊としたボーカル、演奏。やはり実際のライブよりもこちらの方が出来が良いと言える。

このライブを通していえるのは、どの曲も性急で、アルバムよりもテンポをかなり早く演奏している。Disorderなんて、曲名の通りで、演奏そのものもdisorderなのに、ちゃんと演奏は終了出来るのが不思議だ。何ともスリリングなライブなんだろう。

Joy Divisionはボーカルに合わせて各楽器が演奏している

曲の解説でチラと書いたんだが、どうしてこうも彼らの演奏は不安定なのか? それはドラムがリズムをキープしていないことによる。なんと全部の楽器がIanに合わせて演奏しているのだ。それはDeborah CurtisのJoy Division回顧録 Touching from distanceに、そうはっきりと書かれている。日本語版も一時期出ていたようなので、興味のある方は見つけて買われると良いと思う。そこには、妻という、もっともIanの近くに居ながら、そして最も彼らから遠ざけられていた第三者からのJoy Divisionの姿が描かれている。

created by Rinker
¥2,324 (2024/04/20 07:19:04時点 Amazon調べ-詳細)

このライブはIanの死のちょうど3ヶ月前のものだ。まるでその日に向かって、生き急ぐように、バンドが急加速している様に感じるのはオレだけじゃないと思う。


🎶ここまで私のブログを読んで頂き有り難うございました。

記事をシェアして頂けたらとても嬉しいです。

コメントを残す