This time tomorrow / The Kinks 明日の今頃も平安でありますように

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明日の今頃はどうなっているのだろう?

今味わっているような平安なんて、ほんの一瞬の事なのかもしれない。平安に満ちたその1秒後には、全く別の世界になってしまうなんて事もあるわけだ。明日も今日と同じような普通の日が来る事を誰も疑っていないだろう。だけどもそんな日が来るという保証は一切ないのだ。

オレ達は明日の今頃、ひょっとしたら地獄にいるかも知れないんだ。

2年前に愛犬が突然病気になった。それはアジソン病の発病だった。それまでの普通の生活が突然激変した。元気だと思っていた犬は、危うく虹の橋を渡らせるところだった。でもそんな事が起きるとは、起きるまで露も思っていなかった。

今年の正月をどう過ごしたか覚えているだろうか? 多くの人はいつも通りの正月を過ごした事だろう。だけども、それから数ヶ月後には、こんな事態になっているなんて誰が想像できた? 1秒先のことだって分からないのに、明日に何が待っているなんて誰も知らない。静かな正月がとても遠い昔に思える。

This time tomorrow / The Kinks

The KinksのThis time tomorrowは、彼らが1970年に出したアルバム「Lola Versus Powerman And The Moneygoround Part One」という、何とも長い題名のアルバムの中の一曲だ。明日の今ごろ、僕たちはいったい何処に居るのだろう? 何を知るのだろう? 何をしているのだろう? という誰もが心の奥底で持つ不安を、軽快な曲に美しいメロディーをのせて歌っている。

リンク:This time tomorrow 歌詞

歌詞を読めば、ツアーに明け暮れるThe Kinksの日々の情景を歌った事だとすぐに分かる。来る日も来る日も飛行機で(歌詞ではSpace shipと歌われている)移動し、ライブを行い、再び機上の人になる。そんな忙しい日々、飛行機での移動時間だけがそんな日常を冷静に眺められる短い時間なのかもしれない。

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明日をも知れぬわが身

だけども何度もこの曲を聞いていると、その歌詞に込められた心の奥底にある思いに氣がついてくる。ロックバンドなんて浮ついた人気商売なんだ。人気絶頂なんてひょっとしたら今日までのことなのかも知れない。明日になれば落ち目になって、誰に見向きもされなくなるのかも知れない。そんな醒めた氣持ちがくみ取れる。

こうした商売はなんて不安定で、確かなものなんか無いのだろう。ファンの心なんて移り気だ。だから明日の我が身なんか知れたものではないんだ。明日は僕たちは何処に居るのだろうと言う歌詞には、単に明日は何処でライブをしているのだろう以上の意味が込められている。

明日もこんな風に人気バンドでいられるのだろうか? 人気商売と云う、漠としてつかみどころのないエンターテイメント業界に身を置く不安さ。

そんな未来に対する漠然とした不安がひっそりと、この軽快なロックトラックに微妙な陰影を与えている。

明日はいったいどうなるだろう? 誰もが意識はしないものの心の奥底に持っている、そんな思い。いったいオレの明日はどうなっているのだろう? 

明日になれば失業しているかも知れないし、天災で避難民になっているかも知れない、戦争の犠牲者になっているかも知れない。そんな誰しもが抱える漠然とした不安感が、明日に確かなものはないと云う不安感が、この曲の奥底に秘められて歌われている。

昨日まで元気だった犬が、今日には病気になってしまい、明日には死んでいるかもしれない。それは、犬だけじゃなく、オレかもしれないし、女房かも、親父かもしれない。人は常に先の不安を抱えて、でも多くの人は、そんな可能性を見ないように、感じないようにごまかして日々を生きているんだ。

だけども機上のRay様の様に、ふとそんな自分の身の不安定さを感じる時がある。

リンク:Ray Davies – Days/This Time Tomorrow ft. Mumford & Sons
YoutubeでThis time tomorrowで検索すると、こんな動画を見つけた。Ray様とロンドンのフォークバンドMumford & Sonsの共演。DaysからThis time tomorrowへと繋がる流れが、そしてDaysと再び交じり合うアレンジが、ファンには何とも言えないくらい良い。

明日の今、俺は何処にいるんだ?

50歳を超えると、それまでには全然真実味がなかった死への不安をひしひしと感じるようになる。明日には何が有るのだろう? 何が起きるのだろう? たった一日で、がらりと変わってしまった我が愛犬。それは自分に起きる事でも有るのだ。
 
妻と向き合って食べた今年の正月のお節料理。その食卓の下には、自分のご飯を待ちかねてそわそわしている犬のカーシャがいる。ひょっとしたら2年前に死んでいたかも知れないのだ。そんなささいな日々の出来事は、実は本当に大切な事なんだって事に改めて気付かされた犬の病気。

明日もきっと今日と同じような一日が来るだろうなんて、なんの根拠も無い願望なんだ。一日、いやたった1秒後には全てが激変するような事態が待ち受けているかもしれない。まして1年後なんか。明日の今、オレはどこにいるのだろう?

This time tomorrow はそんな事を気付かせてくれる切ない歌だ。

Lola Versus Powerman And The Moneygoround Part Oneについて

This time tomorrowが収録されたLola Versus Powerman And The Moneygoround Part Oneは、そのタイトルからわかるとおり、あの大ヒット曲Lolaが収録されたアルバムだ。不安だらけのこの世界にうんざりしたので猿にでもなって、南の島でひっそりと暮らしたいと歌うApemanも収録されている。

このアルバムは前作Arthurよりもドライブの効いたロック・サウンドに仕上がっており、収録曲はどの曲も粒ぞろいだ(どのアルバムもそうなのだが)。歌詞も皮肉、ユーモア、社会風刺にあふれて、とても深い内容のアルバムになっている。

唯一残念なのがアルバムジャケットで、これじゃちょっとファン以外にはアピール度が足りなさ過ぎると思う。少なくともジャケ買する人はいないだろう。こんな地味なジャケットのアルバムに、こんなノリノリの曲が満載されているとは、誰も思わないだろう。その意外感がThe Kinksの醍醐味でもあるのだ。ハハハ。

ちなみにアルバムタイトルにPart oneとあるものの、Part twoが作られることはなかった事を一言付け加えておく。アルバムにPart oneと名付けた次の日には、Part twoを作る気持ちが失せてしまったんだろう、Ray様は。This time tomorrowだ。何が起きるか分からない。

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