何故日本の東端の、田舎のレコード屋のプログレコーナーが充実していたのか

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流刑地のような田舎のレコード屋の謎

オレの住む北海道東部の田舎町には1軒だけ尾張屋さんというレコード屋さんが有る。オレが子供の時から、レコードはそのお店で買っていた。中1の時にNHKーFM地元局制作の番組でKing Crimsonを聴いた事が発端で、オレはプログレッシブロックの世界に迷い込んでしまった。もちろんそんなバンドのレコードがこんな田舎のレコード屋に売っていなければ、今のオレがなかったのかもしれない。

 この年になっていろいろ過去を回想してみると、その当時は当たり前だと思っていた事が、ちょっと何かおかしいぞと気がつく事が有る。田舎のレコード屋でKing Crimsonが当たり前のように在庫している。Crimsonのコーナだけが充実していた訳じゃない、Pink Floydだって主要アルバムは全て置いてあった。Pink Floydはデビュー当時はサイケデリック・ロックだったんだけれども、その1stアルバムですら尾張屋さんには置いてあった。E,L&PやYesはもちろん、Peter GabrielがアホみたいなカッコをしていたGenesisどころか、Moody Blues、Rick Wakemanの何とか王と8人の妻だって置いてあったぞ。

 そんな事は日本全国津々浦々ごく当たり前の光景だと思っていたけれども、今よくよく考えてみると、それはかなり普通じゃないだろう。当時、人口1万6千人弱の街に、そんなにもプログレファンなるものが居るわけがない。

やはりプログレ好きはマイノリティー

 そりゃあ、今と違って洋楽リスナーは遥かに多かったが、それにしてもプログレとなると、洋楽ファンに占める比率が多い訳がない。実際、オレが中学生の頃にはそんなバンドを聞く同級生なんか1人もいなかった。

 高校生になり網走に汽車で通学するようになると、暇な時間はもちろんレコード屋で時間を過ごすようになった。その中でも高間楽器と云う今は無いレコード屋さんは、プログレだけで云うと尾張屋さんとそう変わらない品揃えだった。大きなレコード屋さんだから、相対的にプログレコーナーの比率は小さくなる。当時は(80年代半ばは)ハードロック、ヘビーメタルが大きな顔をしていた。もちろん一番の売れすじはMTVでよく流れていた洋楽の数々だった。

謎が解ける

 何故こんな日本の東端の、丑寅の金神様が寂しがるような辺境の地のレコード屋さんで、こんなにもプログレコーナーが充実していたのか? それはとても謎だ。当時の尾張屋さんの社長は20年ほど前に亡くなっているが、今はその息子が社長を継いでいる。つい先日その社長と顔を合わせたので、その事について聞いてみた。どうして尾張屋さんのレコード棚には、プログレバンドが多かったのか? と。先代社長がきっとプログレ好きだったに違いない、と思って質問したのだが、答えは意外なものだった。

その社長曰く、「今と違って、当時はレコードの仕入れは、セールスの人(問屋さんだよねきっと)の勧めるままに在庫を決めていたんだよ」と。「だから、セールスの人の趣味がとても反映されていて、きっとそのセールスの人がプログレが好きだったから、そういう事になっていたんじゃないかなぁ。」

 なんとも、真実とはチンケなものなのだろう。じゃあ、その営業マンがもしイタリアン・プログレが好きだったら、尾張屋さんの店頭はそんなバンドばかりになっていたのか? なんて想像してしまった。いや、そんなバンドのアルバムも、確かに在庫していた。

 ディスコモノなんかが大好きだった田舎の少年が、こんなにもどっぷりとプログレ好きになってしまったその原因は、単にお店に出入りしていたセールスマンの音楽趣味がプログレに片寄っていたからだった。いったいそのセールスの人がどういう人なのか解らないが、オレの音楽趣味との同調率は90%を超ええるのは間違い無いだろう。何時か会って見たいものだ。

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