「Nevermind」とカート爺さんは言った 時代の音を作ったNirvana

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一日中路上をうろついている爺さんに、Kurtの姿が重なって見える

通勤時に通り過ぎるコンビニ前の道路を、いつも同じ爺さんがうろついている。カーキ色のキャップをかぶり、薄汚い灰色の長髪が帽子から垂れ下がるように出ている。着ているジャンパーと防寒ズボンは、近寄れば臭いそうだ。彼は朝となく、昼となく、夕方となく、いつも同じ歩道を杖を突きながら、よろよろと虚ろにうろついている。

信号待ちで停車した時にその爺さんをよく観察してみると、時たま意味も無くニヤリと笑う。するとひび割れた唇の間から、それでも数本の歯が覗く。歯の抜けた口腔の暗闇が濃いだけに、よけいに黄ばんだ歯が鈍く輝いて見える。ニヤリと笑い、もごもごと何ごとかを呟いている。

日々そんな爺さんを見ているうちに、こんな思いが頭に浮かんできた。もしKurt Cobainが死なないで老人になっていたら、こんな浮浪者みたいな爺さんになっていたのかも知れない、と。あの爺さんは未来のKurt Cobainの姿なのかも知れない。

いまじゃ浮浪者みたいな爺さんだが、ひょっとすると40年前は何かで売れて全国的に名の知れた人だったのかも知れない。ところが、そんなスターダムに嫌気が差して隠者となり、今じゃこんな日本の鬼門の街で浮浪者然として、残された寿命を無駄に消費しているのかも知れない。小汚い爺さんを見て、オレの想像はどんどんと膨らんでゆく。

かって好きだったバンドNirvana

Nirvanaは一時期かなり好きなバンドだった。だが、この20年ほどは全く聞かなくなってしまった。いや聞くのも嫌になってしまったのだ。あれこれ買ったCDやDVDは、その殆どを売却してしまった。唯一手元に残しているのがNevermindだ。

Nirvanaの音楽は、基本はパンクだが、ハードロックに、ヘビーメタルに、ポップスに、いろんなジャンルの音楽の風味が入り交じっている。パンクはパンク。メタルはメタルなんて云うジャンルなんて、本来不要なのだ。本当はあれも好き、これも好き。このジャンルだからそのバンドを好きになるなんてものじゃないのだ。彼らの音を聞くとKurt達が10代にどういうものを聞いて育ってきたのかがオレにはわかる。

それはオレも同じ道を通ってきたからだ。というのもオレも1967年生まれ。Kurtと同い年だ。同じ時代を生き、国は違えども同じ年に同じものを聞いてきた同世代だ。だから彼の作り出した音楽がとてもしっくりとくる。パンクは好きだ。だけどもBlack Sabbathは最高だ、そしてIron Maidenだってこっそり聞いていたんだ。King CrimsonのREDなんかも好きだ。きっとKurtもそんな音楽遍歴を経たのだろう。彼の作った曲から、そうした臭いが漂ってくる。

俺らの世代は音楽を聴き始めた時には、既にいろんな音楽ジャンルが確立されていた。物心ついた時にはもうパンクも、ハードロックも、60年代のブリティッシュビートバンドも全てそこにあったのだ。ちょっと上の世代はThe Beatlesに始まり、ハードロックが生まれて、プログレが出てきたと思ったら、パンクロックがそんなもの全てをぶち壊したなんていう音楽変遷を体験したろう。だがオレ達の世代は、もう全てが既にそこにあったのだ。

だからそんないろんなバンドのエッセンスを、時間軸に関係なくどんどんと吸収して行ったのがKurtの世代と云う訳だ。だからパンクが好きだけれども、Iron Maidenも聞いていた何てことは普通だった。ただ意気がって、オレはヘビメタなんか嫌いだなんて、嘯いていただけなのだ。

そんな訳で、Kurtはパンクバンドをやったつもりなのだろうが、彼の音にはそうしたハードロック、ヘビーメタル、いやそれだけじゃないThe Beatles等の影響も入り交じっている。好きなバンドの音を真似したつもりなのに、全くの別物が出来上がってしまうなんて事がある。Nirvanaの作り上げた音は、正にそうしたものだと思う。

そしてそうした音こそ、まさにオレ達の世代の音になってしまったわけだ。これぞオレ達世代のMy generationってわけだ。上の世代の人達にはThe Beatlesが、Deep Purpleがあった。彼らの青春サウンドだ。じゃあオレ達の青春サウンドってなんだ? それはNirvanaじゃないか。パンクロックをやっているはずなのに、どうしてもにじみ出てしまうハードロックや、ヘビメタの影響。それがオレ達の世代が生み出した音楽なんだ。

Nirvanaを代表とするグランジブームは、Kurtの死をもって終ってしまった。その時何か一つの時代が終ったような気がした。自分たちの時代と云えるものが終ってしまったように感じた。終ってしまったバンド。終ってしまった青春時代。彼らの音楽を聴くと、惨めで暗い自分の青春時代を見せられているような気がした。だから若さも陰り、かといって年寄りでも無い年齢に達した頃のオレは、彼らの音楽を無意識に遠ざけて、そして拒絶してしまった。

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Kurt Cobainの死から26年経った

Kurt Cobainが亡くなったのは、1994年の4月5日。日本でその事が報道されたのは4月8日になる。その時の驚きは今でも忘れられない。あの時27歳の青年は、いまじゃすっかりくたびれたオジさんになってしまった。Kurtも生きていれば、間違いなく小汚い中年親父になっていた事だろう。

この年になって最近やっと、自分の若い頃の過ち、失敗、恥ずかしい出来事等々を客観的に見られるようになった。自分のしでかした若気の過ちの数々を許せるようになったのだろう。そして不思議な事に、それまで忌避していたNirvanaが懐かしく思い、今ようやっと素直に聞く事が出来るようになった。そうなんだ、そんな若気のいたりなんて些細な事なんだよ。たいした事じゃないんだよ。だからNevermindなんだ。

そうなのだ、Nevermindはそんな、情けなかった自分を励ます言葉だったのだ。そんな事もう氣にしちゃいないよと。スターダムなんかクソくらえと思ってNirvanaを作ったと云うのに、自分がそのスターダムに乗ってしまった。ただ好きな音楽を演奏していただけだったのに、レコード会社など目に見えない大きな仕組みの意のままに操られる存在になってしまった。そんな自分の存在にKurtは嫌になっていたに違いない。だけどそんなKurtにこそ言ってあげたい「Nevermind」と。そんな些細な事はどうでも良いんだ。君らは時代の音を作り上げたんだよ。

今朝も通勤時にコンビニ前の赤信号で止められてしまった。相も変わらずKurt爺さんは、よろけながら杖をついて歩いている。立ち止まっては何かを呟いている。その言葉がオレの耳に漂って聞こえてきた。

「もごもごもご、〜〜〜〜ねばならないなぁ。○×△せねばならねーな」

爺さんはそう呟いていたのだが、オレには「Nevermind」としか聞こえなかった。

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