ライブ初体験その1 ダサィ・アニーキー・イン・シャリ

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ライブ

耳がキーン!これがロックというものなのか

始めて生のロックバンドの演奏を聴いたのは1981年の冬だった。その時私は14歳。そのコンサートは斜里町の中央公民館で行われた地元バンドのクリスマスコンサートだった。なんでそんなコンサートに出かけたかというと部活友達に誘われたからだった。

アマチュアとはいえ、始めてみるロックバンドの生演奏。開演までは心臓がドキドキだった。中学2年生なんてお子ちゃまは私達2人だけ。周りの客は男女半々で、高校生以上の世代ばかり。中には当時流行っていた横浜銀蝿みたいなな連中もずいぶんいた。どちらかというと優等生風の私達(ブラスバンド部所属)は、その中では完全に浮いていた。なので、なるべく目立たないようにビクビクしていた。だって、おっかないんだもん。

もう40年以上も昔の話なので細かいところは良く覚えていないのだが、たしか5組ほどのバンドがステージに立ったはず。地元斜里のバンドが3つほどと、網走など近郊から来たバンドが2組。うちらのお目当ては地元斜里のヘビメタバンドで、このバンドは演奏力がかなり高く、網走管内では知らないものがいないくらい有名人気バンドだった。カバー曲はもちろん、オリジナル曲も多数持っていて、これがなかなか良かった。

ブラスバンドと違い、ロックはアンプで音を増幅する。初めてのロックコンサートは音の大きさにまず驚いた。ベースの音は内蔵にズンズン響き、音の塊で頭上から殴りつけられるような気持ちになった。1曲目が終わる時にはもう耳は耳鳴り。キーンと云う音がずーっと頭に鳴り響いている。隣に座る友達と話すのも、大声じゃないとお互い会話にならない。そんなロックの初洗礼にぼう然とする私達だったが、その後さらにショックなステージが待っていた。

アナーキー・イン・ザ・U.K? いやダサィ・アニーキー・イン・シャリ

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コンサートの中盤、網走から応援に駆けつけてくれたバンドの演奏になった。そのバンドは全員がリーゼント、しかもプラスチックでコーティングしたようなコテコテの光り輝くリーゼント。そしてジョン・トラボルタが土下座してしまうような幅広の衿の派手な道化のようなスーツ。何だかいやな予感がした。私はこういうツッパリ君やヤンキー文化がこの頃から大嫌いだったのだ。

そんなヤンキーな彼らが演奏したのは、なんとアナーキーだった。日本を代表するパンクバンドのアナーキーの曲を。そして最後のとどめは、Anarchy in the U.Kだった。そう、パンクの国歌とも言うべきあの名曲を、誰がどう見てもパンクとは正反対のヤンキーが歌う。オレってグレート!なんて言いそうな奴らにパンクは似合わない。

ステージの下では最初から、そのバンドのフォロワーのリーゼント軍団がこぶしをヨコにフリフリ踊っていたが(こぶしは振り上げるものだ!)、Anarchy in the U.Kのイントロが鳴り響いた瞬間、大挙してステージに駆け上った。そして、バンドの演奏に合わせて腰をクネクネ、腕をクネクネ、大ツイスト大会。その時の田舎にはタテノリ、ポゴダンスなんて知るものは誰もいなかったのだ。うちら子供達は、口をアングリと開けて、この80年代の盆踊りを観ていたものだ。

パンク・ロックでツイストを踊る。14歳で、まだパンクもメタルの違いもそれほど分かっていなかった少年だが、これは何か間違っている、これはとってもダサぞという事は直感で分かった。でも、座って見ていたらその連中に殴られそうだから、立って見ていた私達2人。

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過疎地は情報も過疎ゆえに想像力が高まる

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そんな訳で、田舎って正しい情報が入ってこないから、雑誌や新聞の小さな写真を見て拡大解釈、想像力で補うので、こんなダサダサのハイブリッドが生まれてしまうのだと思う。

そんな勘違いがたまにスゴイ融合を起して素晴らしいものができ上がる時もある(と思う)。私の同世代のニルヴァーナなんか、間違いなくパンクとメタル両方の影響を受けてあの音作り上げたんだと言う事が自分の体験から良く判る。1967年ごろに生まれた子どもは、思春期を迎える頃パンクもヘビメタも同時に存在して、そんな細かなジャンルなんか氣にしないで両方同時に聞いているのが変じゃなかったのだ。

シアトル近郊の田舎にもきっとパンクでツイストを踊る勘違いロッカーがいたに違いない。もしパラレルワールドと云うものがあるなら、それがグランジロックと呼ばれて世界的ブームになった世界があるのかも。私はそんな世界には生きたくないが、、、、、。

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