ジャックス、時代を超えて暗き輝きを続ける孤高のロックバンド

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1980年代後半まで、本当に伝説のバンドだったジャックス

 オレがジャックスというバンドの存在に始めて出会ったのは、高校生の時。渋谷陽一のFMラジオ番組・サウンドストリートだった。その日は早川義夫特集で、その時ジャックスという1960年代に活動した日本のロックバンドが有ったことを知る。

 その後同級生から借りた遠藤ミチロウのカセットブック「ベトナム伝説」を聞き、その中の1曲の歌詞に、まるで空が堕ちてきたかのような衝撃を受ける。それはどんなにハードなギターでも不可能なくらいの、重さ、硬質さ、鋭さで少年の心をぶちのめした。まさに足腰が経たないくらいに。それは「割れた鏡の中から」という曲だった。ジャックスの曲のカバー曲だった。

 ジャックスはオレが赤ん坊の頃(1968年)、GSブームの中デビューし、ひっそりと暗い花を咲かせて消えていったバンドだ。GS真っ盛りの中、周囲とは溶け合わない全く異質の音を出していた。フォークとジャズを融合させたような、何処にも無いオリジナルな音。そして早川義夫が書く狂気にも似た詩の世界。良くもまあこんな異質なバンドが、忽然とあの時代に出現したと思う。何処にも参考になるものが無いから、自分たちでできる事を精一杯やってでき上がった音、それがジャックスサウンドだった。

 オレは彼らこそ、日本語のロックの始まりだと思う。巷で云われているように、はっぴいえんどが日本語でロックを歌ったロックバンドの始めじゃない。すでにジャックスと云う孤高のバンドが、誰も真似のしようのない独自の日本語のロックを作っていた。海外の単なるコピーばかり蔓延る、まだロックシーンなんてものが成立していない中に、突然出現してしまった本物のロックバンドジャックス。

 だけども残念なことに、あまりにも売れなかったので、殆どの人の目に触れる事無く、暗闇の中で咲いた花はひっそりとその暗い花びらを散らしていった。極少数のファンの心に、計り知れない衝撃を残して。

ジャックスの歴史

 極簡単にジャックスの歴史をまとめて見ようと思う。
1965年 早川義夫を中心にフォークトリオナイチンゲイルが結成される。
1966年 ナイチンゲイルが、ジャックスにバンド名変更。
1967年 年谷野ひとし、木田高介、水橋春夫が加入
1968年 3月。1stシングル「からっぽの世界」でレコードデビュー
1968年 9月。1stアルバム「ジャックスの世界」発表。水橋春夫脱退。
1968年 11月。角田ひろ(後のつのだ☆ひろ)加入。
1969年 8月。ジャックス解散。
1969年 10月。2ndアルバム「ジャックスの奇跡」発表。

 こうして見ると、ジャックスとしての実質的な活動期間は、わずか2年程度。活動期間中に出したアルバムは1枚。異常に暗く、そして聞くものを言葉と音の迷宮に誘い込むような完成度の高い1st。それに対して2ndアルバムは、レコーディング中にバンドが解散してしまった為、1stのボツテイク等を利用してなんとかアルバムに仕立てたという。

 これらの音源は長らく再発されなかった事もあり、ジャックスはますます伝説のロックバンドになってしまった。その一番の原因はやはり「からっぽの世界」だろう。歌詞に「唖」という言葉が有る為、1980年代には再発しずらかったようだ。

 オレのようなジャックスの存在に気がついたロックファンの声が高まり、そしてマニアックなジャックスファンが書いた「定本ジャックス」の後押しもあり、1985年に「Legend」というベストアルバムが、ようやく発売される。やはり、からっぽの世界の収録は見送られたが、この時ついに永年のジャックスの封印は解かれ、彼らの音は多くのロックファンの耳にようやく届くことになった。

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伝説から蘇るジャックス

 1度解き放たれたジャックス再評価の波は衰えない。その後、1986年にインディーズでは有るが、ソリッドレコードより、ニッポン放送に残されていた音源を元に「からっぽの世界」のシングルレコードが発売される。田舎在住者は、こうして幻のこの曲を通信販売で手に入れることが出来た。

 1989年に同じソリッドレコードが、版権の問題をクリアして、オリジナルアルバム2枚にライブアルバム2枚、スタジオライブ1枚、サントラ1枚にシングル1枚を1つのボックスにまとめた、「Jacks CD BOX」を発売。こうして彼らの音全てが、世に再び蘇った。15000円もする高額なボックスセットだったが、食費を減らして、いろんな交際は一切断り、なんとかお金を工面してオレは購入したよ。

 こうしてようやっと、ジャックスが演奏する永遠の水晶の宮殿に、オレは足を踏み入れることが出来たのだよ。

Jacks CD Box(ソリッドレコード)
Jacks CD Boxには5つのアルバムと、CDシングル1枚が入っていた。

■このCD Boxに収録されている音源紹介

★1stアルバム「ジャックスの世界」 いわずと知れた日本のロックの名盤中の名盤。

★2nd「ジャックスの奇跡 名義はジャックスでは無く、ジャックス・スーパー・セッションになっている。2nd製作中にバンドが解散した為、1stの没テイク等を寄せ集めて何とかアルバムにした作品。そのためアルバムとしての統一感は無い。つのだ☆ひろのボーカルを聞くことが出来る。

COMPLETE REALIZATION」 これは1986年に東芝から「REMAINS」の名でレコードで発売されていたもの。若松孝二監督のポルノ映画「腹貸し女」の為に作られたサントラ。現在「若松孝二傑作選3 <腹貸し女>」の名で、さらに発掘された7曲を加えた20曲で発売されている。

★JACKS RADIO SESSION ニッポン放送のフォーク・ビレッジ用に録音されたスタジオライブ。やはり1986年に「Echoes in the radio」の名前で東芝からカセットテープで発売されていたものに、更に発掘された3曲を追加したもの。

JACS SHOW 1969年3月21日に大阪厚生年金会館中ホールで行われたライブを収録。CD2枚組。ライブ演奏での、渾沌感はまさに鬼気迫る演奏。

★タクトデイズ タクトレーベルで発売されたシングル2枚をシングルCD1枚に収録したもの。からっぽの世界、いい娘だね、マリアンヌ、時計を止めて、の4曲収録。

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 今じゃAmazonでも、オリジナルアルバムがそのままの形で販売されている。なんなんだろう、差別用語と云う自主規制は。結局需要があれば発売されているんじゃないか。80年代の言葉差別による発売中止はなんだったんだ? と思う。下らない言葉狩りには、つばを吐きかけたくなる。

 孤高と渾沌と狂気が織りなす調和、それがジャックスだ。時代に媚を売らなかった彼らの音は、いつまでも古びることなく新しい。今も水晶の宮で、時間を超え、誰の真似でもない音楽を永遠に演奏し続けている。ギタリストの水橋春夫さんも永遠になってしまった。合掌

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