21世紀の精神異常者 またの名を21馬鹿 キングクリムゾンの21世紀のスキッゾイドマン

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オレがまだ3歳の幼児だった頃の記憶

 初冬のとても寒い朝。目が覚めてまだぼーっとしているオレの耳に、初めて聞く異常な響きが遠くから聞こえてきた。怪獣の咆哮のような、甲高く、とても鋭く硬い音だ。そんな音が、凍れた空気を破壊するような、まがまがしさで空から響いて聞こえた。

 その音を聞いた瞬間、何故かオレは『世界の終わりがやって来た』と思い、恐怖に震えた。そばにいた母親に、
「世界が終るよ。世界が終っちゃうよ。コワイよー。」
と何度もしつこく訴えた。母親はおびえるオレを見て、ニコリとして、
「世界なんか終らないよ。大丈夫だよ。ただの汽車の音だベさ」
と言った。

 そう、オレが世界が終る音だと思った音は、単なる汽車の警笛だったのだ。50年前の釧網線には蒸気機関車が走っていた。オレの住むその家は、線路まで直線距離で数百mの場所。これまで何度も聞いているはずなのに、冬の乾燥した空気がその音を、より禍々しく、恐ろしく響かせたのだろうと思う。オレにはそれが、世界の終わりを告げる音に聞こえたのだ。

だが、何故3歳の幼児が、「世界の終わり」を知っていたのだろうか?

精神異常者の21世紀

 未だに「21世紀の精神異常者(以下21馬鹿)」を聞くと、13歳の初夏に初めて聞いた時の戦慄が蘇る。もう40年近い前の事だ。曲のイントロに付け加えられたおどろおどろしい木管楽器の響き。響きと云うよりも、咆哮と云った方が良いかもしれない。その後に続く、神経質で、重々しいギターの響き。それにしても当時のレコード会社のディレクターの日本語センスは素晴らしいと思う。この曲の邦題を「21世紀の精神異常者」と付けてしまうんだから。

 本当に21世紀になってみたら、言葉狩りで同じ曲が「21世紀のスキッゾイドマン」と呼ばなければならなくなってしまった。なんててバカバカしいんだ。それじゃハリウッドの安っぽいアメコミのヒーローみたいじゃないか。どうせならSchizoidの本来の意味、精神分裂病、それまた言ってはいけない言葉なので、「21世紀の統合失調症男」にすれば良かったのに。

 実際に21世紀になってみたら、この世は本当に精神異常者の世界になってしまった。頭の弱いソーリは、国会で気に入らない事を質問されようなら、支離滅裂な金切り声をあげ、質問者を糾弾する。妄想に毒された訳の判らない答弁を喚きたてる国会は、何故か自称国営放送では放送されず、新聞で報道される事も無い。それがもしTV中継されたとしても、国民は何の反応も示さない。これぞ21世紀の精神異常者の世界だ。21馬鹿ソーリが支配する精神異常の国。

21馬鹿の聞き比べ

 クソみたいな政治の話しはさておき、1969年のデビューから1974年までのKing Crimsonはメンバーの変遷が著しい。King Crimsonの代表曲だけに、その時々のメンバーによってこの曲が演奏されている。しかもまるで別の曲のように。90年代後半のCrimsonも2019年現在のCrimsonも演奏していて、そのどれもが面白い。

この同じ曲を演奏メンバー違いで聴き比べるというのも、Crimso Schizoid達の楽しみ方なのだ。実際21馬鹿だけ5曲入っている企画盤CDが存在している。もちろんその曲の殆どが演奏違い(いやバンド違いと言って良いと思う。ギター以外全員別メンバーなんだから)。

↓これがそのCD。何度シャッフルしても、21馬鹿しか再生しません

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どの時代の21馬鹿がベストか?

1番は1973〜74年のバンド

 21馬鹿は、各時代のメンバーで、それぞれが名演奏を繰り広げているのだが、やはり何と云っても一番は1973年〜1974年のものだろう。The road to redにその暴虐的な素晴らしい演奏がいくつも納められている。John & Billの変拍子リズム隊があり得ないような複雑怪奇なリズムを息ぴったりにキープしている。

 オリジナルのジャズ・ロック的な雰囲気が見事なくらいに木っ端みじんに粉砕されている。そして何と云ってもJohn Wetton様のオレ様ベースの暴走っぷりが素晴らしいし、彼のボーカルの素晴らしさが、演奏をより魅力的に仕上げている

2番目は1972年のバンド

 次は1972年のラインナップで、アルバムEarthboundで聞く事が出来る。ブルーズ野郎共の(Robertは除く)21馬鹿だ。このバンドの場合サックスのMel Collinsが加わっていて、それだけでジャズ・ロックっぽく感じる。Melのサックスも狂気を帯びていていい。だが、この演奏では何と云ってもIan Wallaceの狂気の暴走重戦車ドラムが素晴らしい。リードギターならぬ、リードドラムである。まるでリードはRobertに任せていられるかと言わんばかりに、ドラムがリフを刻むようにドカドカドカと最初から最後まで鳴り響く。緻密さ、繊細さ、優しさのかけらも無い、まるで原始人の様なドラムが圧倒的に素晴らしい。John様に比べればはるかに劣るのであるが、Bozのボーカルも、ヤケクソになって歌っているのか、喉も裂けよと絶唱する様が全く素晴らしい。この1曲だけで、Earthboundは聞く価値がある。

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夢の共演21st Century Schizoid man

こんな記事を書いていて思い出したのだが、1999年に出たDeja VroomというDVDの作品がある。日本公演の映像作品なのだが、ライブのおまけで、21st Century Schizoid BANDなるものが収録されている。これは1969、1971、1974、1996年のリズム隊、ギター、ボーカル、ソローパートを自由に組み合わせて、オリジナルの21馬鹿を作って聞けると云うものだった。違う時代の演奏をよくもまあ、違和感なく合せられるものだなぁと感心したのだが、2、3回やって飽きてしまった。

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真にプログレッシブな21世紀の21馬鹿はこれだ

 現在のKing Crimsonの21馬鹿もyoutube等で聞く事が出来るのだが、オレには正直どうでも良い(そんな事を云うとスターレス高島に説教をくらいそうだ)。21世紀Crimsonのスリリングさのかけらも無い演奏は、オレには老人会の余興に聞こえる。プログレッシブて言葉は、本来の意味を離れてこんな演奏をするロックの枕詞になってしまった。

本来の意味でのプログレッシブというのなら、Robert Frippの弟子達のCalifornia Guitar Trioこそ、その言葉に相応しいとオレは思うのだ。Robert Frippの遺産は、確実に若い世代に受け継がれていると思う。

California Guitar TrioのZundoko Bushiを聞いて、たまげて欲しいw

世界の終わりと21馬鹿

 21馬鹿を初めて聞いた時、オレは背筋に物凄い戦慄を感じた。幼い頃の遠い恐怖の記憶が蘇る。そう3歳の時に「世界の終わりの音」を聞いた時の恐怖が蘇った。


 21馬鹿は、あの有名なギターリフの前に、数秒間木管楽器による不気味な演奏(効果音?)が付け加えられている。神経を逆なでするような不協和音の、不吉さを秘めた木管楽器の響き。この響きを聞いた時に、オレは3歳の幼児にもどって、世界が終ると云う恐怖に震えた。世界が終る。世界が終りを告げる不吉な不協和音が地に鳴り響き、そして精神異常者の妄想による暴虐が始まる。21世紀の精神異常者の世界、それは今だ。

 この曲を聴く度に、幼いオレの恐怖が蘇る。遠い昔に感じたあの恐怖感。21馬鹿を聞く度に、その戦慄に打たれる。

 こうして21世紀を迎えて、今実際に私たちは精神異常者の世界に生きる事になってしまった。現実はこの歌を凌駕してしまった。

 この世界に正気はいったいどこにあるというのだろう?


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4 Responses to “21世紀の精神異常者 またの名を21馬鹿 キングクリムゾンの21世紀のスキッゾイドマン”
  1. dalichoko says:
    • katz says:
  2. gkrsnama says:
    • katz says:

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