キンクス ヴィレッジ・グリーン・プリザヴェイション・ソサエティ解説part2 これぞ究極のサイケデリック・アルバム

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ヴィレッジ・グリーン
究極のサイケロック

ヴィレッジ・グリーン・プリザヴェーション・ソサエティ各曲解説

さてpart1を書いてからずいぶんと時間が経ってしまった(part1と銘打ってその続き出さないというのもキンクス・ファンらしかったのだが)。今回は続きとして、ヴィレッジ・グリーン・プリザヴェーション・ソサエティの各曲について、簡単に解説してみようと思う。

世の中はサイケデリック・ロックが花盛り。頭の中は花が咲き乱れてラリパッパ。そんなさなか我がザ・キンクスはこのアルバムで、何について歌っていたのか? まずはA面の曲から。

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1曲目ザ・ヴィレッジ・グリーン・プリザヴェーション・ソサエティ

これはどんどんとアメリカンになってゆくイギリスを嘆く歌。あたしらは公共緑地保存協会なんだ、古き良きイギリス的なものを守るんだという歌っている。ヴィレッジ・グリーンとは、イングランドの各々の町の中心にある公園の様なものと理解すればほぼまちがいないとおもう。そこで人々が集まってバザールを開いたりといった、単なる公園ではない交流の場として機能していたとの事だ。

どんどんと失われてゆくイングランド的なものに対する郷愁と、そして自分たちのアイデンティティーを失ってはいけないという思いがこの歌に込められている。イングランドは止めようも無くアメリカ化して行く。ところが古いものを見直す事で、新しい生き方がそこに見いだされるんだ、とレイ様は歌っている。

ところでこの歌詞の中で、ドナルド・ダッグという単語が出てきて、長年この意味が分からなかった。イギリスの古き良き時代を懐かしむ歌に、何故アメリカのドナルド・ダッグが? と。これはどうやらコックニーでグッド・ラックを意味しているらしい。日本人にはここまで来るともうさっぽり分からん。

2曲目ドゥ・ユー・リメンバー・ウォルター

ウォルターという名前にたくして、すっかり変わってしまったイングランドを残念がる歌。人は変わってしまうけど思いでは永遠なんだ。

3曲目ピクチャー・ブック

両親の写真帳をみて昔を懐かしむ歌。ギターのリフがとても好きだ。昔々父さんが撮影した母さんの若い頃の写真を見て、良き時代に思いをはせる。あの頃は幸せだった。昔の話。

4曲目ジョニー・サンダー

カミナリ・ジョニー。これは、きっと実在した暴走族の彼の歌なんだろうと思う。オレはお前らみたいにはなるもんかと、孤高を貫くジョニーさんの賛歌。ロックミュージシャンのジョニー・サンダースはこの歌から名前を取ったという説がある。本当かどうかは分からん。

5曲目ラスト・オブ・ザ・スチームパワード・トレインズ。

最後の蒸気機関車の歌。時代遅れの象徴としての蒸気機関車へのあわれみを歌う。そしてその姿はいつの日にかの自分の姿でもあるのだ。

6曲目ビッグ・スカイ

頭上に広がる大空について歌っている。作詞家、作曲家、ミュージシャンとしてこれまで葛藤の日々をすごしてきたレイ様。大空はそんな自分たちを見下ろしている。悲しみ、苦闘といった人間の出来事なんか、大空から見ればささいな事なんだ。そして人は何時か自由になれる。大空を見ていれば心配も無くなるんだ。

B面1曲目アニマル・ファーム

日々の辛い生活にうんざりして、妄想の理想郷「動物農場」に行って暮らしたいと歌っている。きっとミュージシャンとして疲弊し尽くしたレイ様の心境を歌っているのだと思う。沢山の動物に囲まれた動物農場で静かに暮らしたい。人が、動物が生き生きとして暮らすことの出来る動物農場。そんなあり得ない世界をこの歌で思い描いている。

2曲目ヴィレッジ・グリーン

名を上げようと素朴な田舎町と彼女を捨てて都会に出た主人公。その彼が田舎を捨ててしまったことを悔やみ、帰りたいと切望している。だけどもその素朴な田舎町もアメリカ人ツアー客が訪れるようになり変わってしまった。今はもうないあの素朴な田舎町を懐かしむといった内容の歌。

3曲目スターストラック

たぶん都会に出た田舎娘が都会の生活に浮かれまくり、そしてスターに心を奪われてしまう。そんな事じゃ身を滅ぼしちゃうよ。世界は甘くはないよ。なんて云う内容の歌。

4曲目フェノメナル・キャット

正直解釈が難しい。昔々太った猫がおりました。太っていたいから毎日のんべんだらりとしている。そんな彼は世界中の人気者で、世界中を旅したことがある。なんていうおとぎ話のような歌。きっとレイ様版マザーグースだろうと思う。

5曲目オール・オブ・マイ・フレンズ・ワー・ゼア

これまた解釈の難しい曲。ロックスターである主人公。以前のステージでの失敗で絶望していた。しかしまたステージに立つ。また嘲りを浮けるのではないかと震えながら。だが観客席にいたのは、全ての友達たち。彼らは主人公を暖かく迎え入れてくれたのだ。そうして主人公は元の私に戻ることが出来たのだ。

これはロックスターの心の内面をさらけ出す歌だと思うのだ。かつてキンクスはお行儀の悪さからアメリカでの活動を禁止されたということがあった。この歌はそれらのことに関するものなんじゃないかなと思う。

6曲目ウィックト・アナベラ

ヴィレッジ・グリーンのの片隅に住む魔女のアナベラについて歌った曲。子どもの頃に、どこそこに怖い魔女のような人が住んでいて云々なんて話は何処にでもあるよね。そんなコワイ魔女の歌。良い子にしていないとアナベラが彼女の屋敷に連れてってしまうよ。こうした古い言い伝えが残っているのもヴィレッジ・グリーンというものなのかもしれない。

7曲目モニカ

真夜中になると街灯の下に現れるモニカという娼婦。彼女の愛は金では買うことが出来ない。そんなモニカに恋い焦がれる主人公。これまた不思議な歌。都会に暮らす主人公は、街娼に恋をしてしまった。これを聞いているとポリスのロクサーヌを思い出す。いやロクサーヌはこの曲をモチーフにしているのかもしれない。

8曲目ピープル・テイク・ピクチャーズ・オブ・イーチ・アザー

自分がそこにいたと云うことを証明する為に、お互いに写真を撮りあっているよ。いつか大切だった瞬間を忘れてしまった時のために、証拠として写真を撮っておくんだ。だけど僕はその時のことを今でも愛おしく思っている。だからそんな写真を僕には見せないでくれ。撮られた写真を見ることで時間が過ぎたことを感じてしまうけれども、想い出の中の映像は時間が過ぎない。そんな事を歌っているのだろうと思う。レイ様の書いたXレイを読むと、どうやら写真が好きじゃないようだ。

ヴィレッジ・グリーンこそ究極のサイケデリック・ロック

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何はともあれ、1967年といえばサイケデリック旋風が吹き荒れた年として知られている。猫も杓子も精神の拡張だのトリップだのラリラリだのといっていた時代に、我がThe Kinksはそんな時代の流行なんかには目もくれず、イングランドの古き良き時代の景色を、フォークソングでつづるアルバムを発表していた。

ところがこれは在る意味究極のサイケデリックアルバムともいえるんじゃないのか? と最近思うようになってきた。歌詞をじっくりと読んでみる。そこに描かれているのは、今はもうなき古き良きイングランド。だけどもその憧れの世界は無くなってしまったのかというと、いや今も心の中にあるのだ。そう心の中の思いではいつまでも古びることがない。だから自分の心の奥深くにどっぷりと浸かろう、と歌っているとも読めるのだ。何処にも行く必要が無いんだ。自分の心の中に深く分け入るだけで良いんだ。

そう言ったわけで、流行もファッションも全てほっといて、ひたすら自分の内面にフォーカスして、閉じこもって作り上げたお花畑の世界。そう考えたら、これ以上のサイケデリックアルバムは無いだろう。

他のバンドは意識の拡大とやらで、外に外に意識を向けて行った。そしてひたすら音でサイケデリックを表現しようと奇妙な音楽曲を作り上げていた。それに対してレイ様はとことん心の内側の精神世界を突き詰めていった。こうして出来上がったのがヴィレッジ・グリーン・プリザヴェーション・ソサエティ。表向きは全くサイケデリックとは無関係な音の作品として。

だけども自分の心の奥底にあるものをとことん突き詰めて、まさに他にはない内面世界を追求したアルバムを作り上げたこのアルバムこそサイケデリックと呼ばずして、何をサイケデリックと呼ぶのだろう。

ふにゃふにゃした音ばかりが精神世界の拡張じゃないのだ。自分の内面こそ、深い深い精神の底なし沼のような世界があるのだ。外じゃない、拡張じゃない、薬じゃない、自分の内面の奥深くに潜るだけで良いんだ。

そう言った意味でこのヴィレッジ・グリーン・プリザヴェーション・ソサエティこそ、究極のサイケデリックアルバムなのだ! と訳の分からない事を書いて、part2を終る。


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