まるで場末のスナックの痴話げんか ヒューマンリーグ・愛の残り火 The Human League / Don’t you want me
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イギリスのシングル・ヒットチャートで1位を取った曲ベスト100
先日イギリスの高級紙ガーディアンの、音楽欄に公開されていた記事が面白かった。それはイギリスの音楽シングルチャートでNo1になった曲から選んだ、「最高のNo1ヒット曲ベスト100」なるリストだった。どうせクソビートルズがベスト10を独占しているんだろうと思いきや、各アーティスト1曲のみという縛りがついている。その縛りがあるゆえに、とてもユニークで面白いリストになっていた。
どんな曲がベスト100に入っているかは、下記のリンクを参照してくれ。またSpotifyでそのベスト100のプレイリストを公開している。
リンク:The 100 greatest UK No 1s: 100-1
なんと、The Human LeagueのDon’t you want me(愛の残り火)がベスト10にランクイン!
このランキングはオレの青春のヒット曲満載なのでちょっと面白い。しかも意外な曲が上位に入っている。オレ的にはTubeway Armyが43位、The Kinksが28位(ちょっとランクが低すぎじゃないですかぁ?)、Ian Dury & the blockheadsが18位と云うのが、へーと云う感じで面白かった。
だが1番驚いたのは、7位のThe Human LeagueのDon’t you want me(邦題:愛の残り火)だ。こんな曲がベスト10に入るとは! 確かにとても耳馴染の良いメロディーに、メランコリーな曲調でオレも大好きな曲ではある。だがそれが最高のシングルベスト100で7位に入るとは。流石イギリスだと思う。
選者のコメントを観ると、パンク旋風が吹き荒れた後の音楽シーンで、素人ミュージシャンがテクノロジーを使うことでポピュラー音楽の新しい可能性を開いた、と云う辺りを評価したらしい。下手くそだと言われるパンクロックだってギターやベースなど楽器が最低限弾けなければ音楽にならない。
だがシンセサイザーなら、その敷居がもっと低くなる。一日何時間も練習してテクニックを習得する暇があれば、感性をそのまま音楽にすることができるかもしれないのだ。それがエレクトロニック・ミュージックの意義というわけだ。
今聞くと、場末の酒場で落ちぶれたオッサンの恨み節に聞こえる
テクノポップなんて言葉はもうとっくの昔に死語になってしまった。このDon’t you want meが発売されたのは1981年11月。翌12月にはチャートで1位(U.Kチャート)になる。クリスマスシーズンに5週間も1位を維持すると云うその年1番の大ヒットとなった。
その頃は日本でもYMOを筆頭とするテクノポップ・ブーム巻き起こっていた。シンセサイザーで演奏される音楽。田舎の少年達がそんな未来臭プンプンのテクノポップに夢中にならない訳が無い。テクノポップを聴けば、こんな田舎に居ながらも、時代の最先端にいるような、そんな錯覚を覚えていた。
同級生はYMOやヒカシューなんかに夢中になっていたが、へそ曲がりのオレは、ラジオから流れてくるU.Kチャートのヒット曲をFM fan片手にチェックしていた。Human LeagueのDon’t you want meもそんな曲のひとつだった。
男女の掛け合い、耳障りの良いポップなメロディー。ノリノリのシンセベース。シンセサイザーの作る音は少年を夢中にさせた未来のポップスってわけだ。
そんな未来を先取りしたはずのテクノポップだったが、今になって歌詞をちゃんと読みながら聞いてみると、これが何とも。歌われている内容は、場末のスナックで、落ちぶれたオヤジがママさん相手にクダを巻いている恨み節の歌に聞こえてしまってどうしょうもない。
「お前が成功したのは、オレが引き立ててやったからだぞ。なんだよ、もうオレのことは要らないっていうのかよ。嘘だよな、そんな言葉、、、、。」
そんな田舎の安スナックの会話が目に浮かんできそうだ。
リンク:Don’t you want me / Human League PVビデオ
Human Leagueそのものが場末のスナックのカラオケになってしまった
そんなHuman Leagueなんだが、つい先日Youtubeであれこれ検索してみた。そうすると当時のライブ映像もずいぶんと出てくる。オレが子供の頃には、一切見る事の出来なかった動く彼らの姿だ。
そして最近の彼らの姿も出てきた。見た瞬間にオレは凍りついたね。35年前に輝ける未来の音楽と思って聴いていたこの曲、まさにその同じ曲を、その未来にいるオレが聴いてがく然とした。
そのPVに映るメンバー達は、まるで場末の飲み屋のホステスと客のようにしか見えなかった。あのつやつやのワンレンのフィル・オーキーはまさかのスキンヘッド。まるで田舎の不動産屋の社長のようだ。そしてデュエット相手のスーザン・アン・サリーは、まさに田舎のスナックのママさんのような安っぽい佇まい。
子どもの時に思い描いた未来は、場末のスナックだったとは。40年近く時間が流れて、うらびれたオヤジが、事業が成功したママさんにからむ歌そのままになってしまった。
リンク:Don’t you want me / Human League 2006年スタジオライブ
何とも寂しい風景だ。洋楽夢グループで全国をツアーしてもらいたい。
場末のスナックの物語
昔ある集まりに顔を出した時のこと。会合終了後、そのまま参加者のおっさん方とスナックの2次会まで付合う羽目になってしまった。憲法を守る事に一生懸命で、本業の公務はすっかりおざなりで有名な、某○○署OBの爺さん達だ。それだけで憂鬱になってくる情景だ。
そんな爺さん達は、誰かが歌う昭和歌謡に合わせてチークダンスもどきを、場末のホステスとする。かなり嫌な景色だ。と思っているとその爺さん、年季の入ったおばちゃんホステスの乳を揉みながら踊っているではないか。こんな流刑地のような日本の東端、場末の寂れたスナックでは、それが日常風景なんだろう。日頃えらそうに立派なことを言っている爺さんは、酔っぱらって初老のホステスの乳もみだよ。
子どもの頃のオレが思い描いた輝かしい未来。オレ達を待っているのは、科学技術が発達した明るい未来か? はたまたBlade Runnerに描かれていたようなデストピアの未来か? 子供自分のオレは、21世紀の世界の様子を想像しては、ドキドキしたものだ。
40年後、実際に子供だったオレが夢想したその未来にいる。その未来の世界でオレが実際に見たものは、場末のスナックでホステスの乳を揉み踊る爺さんたち。ピーヒャラ、ピーヒャラ、乳揉むポンポコリンだ。予想もしなかった最悪の未来だなこりゃあ。
未来とは何ともしょぼいものだ。きっと車が空を飛ぶような時代になっても、場末のスナックでオッサンは、うらびれたホステスの乳をもみながら変なダンスを踊っているのだろう。人は時代が変わっても変わらない。
そして子供のころ聴いた歌は、今も色あせないのだ。たとえ場末のスナックの物語だったとしても。
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