Riders on the storm / The Doors 夏の終わりに降る大雨
Table of Contents
Summer’s almost gone
「知床の夏は短い」とよく云われる。だがそんな事はない。6月の半ばから8月一杯までが夏だとオレは思うのだ。ただ、「真夏」と言える時期に関しては、本当に短いと思う。子供の頃からこの地域に住んでいる者にとって、真夏とは7月25日頃から始まりで、ピークは30日前後。そして8月の第一週には終わりを迎えるのが知床の「真夏」なんだ。7月の終わりに30度を超える日が数日続いて、もうこんな暑い日はまっぴらだと数日ぐったりしていると、突然夏の盛りは終ってしまう。オレが子供の時から、この地域の真夏は本当に一瞬の事だ。「真夏」が1ヶ月以上続くのなら、二酸化炭素で地球が温暖化するなんてざれ言を少しは信じても良い。
LA woman
短い真夏の後、だいたい決まって8月の終り頃に雷を伴う大雨が降る。そして、その翌日から朝の空気の冷たさの質が変わる。その時が夏の終わりだ。嵐にのって夏が去って云ったように思える。そんな夏の終わりを知らせる雨が降っている時に、いつもオレの頭に流れて来るのはThe DoorsのRiders on the stormだ。雷と雨音のSEからこの曲は始まる。
1971年4月に発表されたThe doorsのL.A womanは、Jim Morrisonが参加した最後のアルバムになってしまった。レコーディング作業は、一発録音に近い状態で録られたと言う。またJimの歌は浴室で録音されたと云う話が残っている。Jimはこのアルバムの録音を終えると、そそくさとバンドを離れパリに向かった。そして7月3日、Jimは浴室で死んでいるのが恋人によって見つかる。The Doorsのメンバーは誰一人Jimの死体を確認していない。後にパリにあるJimの墓をお参りしたJohn Densmoreは、「墓が小さ過ぎる。(本当にここにJimが埋葬されているのか?)」 と語ったと云う話が残っている。Jimは本当に死んだのか?
The Doorsはアルバム最後の曲を10分ほどの大曲で締めるものが多い。LA womanでもその形式を踏襲している。アルバム最後の曲はRiders on the storm。7分9秒の曲だ。オレには、この曲は夏の終わりを告げる大雨の雨音に聞こえる。雨音のようなキーボード。雨音を縫うように聞こえてくるJimのボーカル。そう終るのは夏だけじゃなく、The doorsもこの曲で終焉を迎えた。何だかこの曲を聴いていると、当地の短い夏の終わりと、The doorsの短いバンド生命が重なって聞こえる。
Riders on the storm
カリフォルニアはからっと青い空が広がっているのだろうか? それともオホーツクのようにグレーの鈍よりとした空なんだろうか? この曲を聴いていると、たとえからっと晴れ渡ったカリフォルニア空でも、Jim Morrisonの目にはグレーに見えているんじゃないかなと思えてくる。
他のアルバムの最後の大曲、例えば1stのThe end、2ndのWhen the music overとは違い、Riders on the stormの音には躍動感がかけらも無い。まるで冥界から歌いかけているように聞こえるJimの声。Jimは嵐にのって冥界に旅立ちながら、歌いかけているようにオレには聞こえる。この曲には何か生きていないものを感じる。
LA Woman全体はノリの良い曲で構成されているだけに、この1曲だけが妙に浮いて聞こえる。それはJoy DivisionのCloserのような音触りだ。もしオレに見えるなら、曲に死相が出ているような気がして仕方がない。Riders on the stormは、Jimが他のメンバーを置いて、何処か遠くへ旅立つのを示唆しているような気がして仕方がない。
Jimが旅立ち、残されたのは雨とそして雷。冷たいオルガンの音色は、秋の冷たい雨の音のようだ。Jim亡き後、抜け殻のThe Doorsは、それでも2枚のスタジオアルバムを残しながらも、活動は行き詰まり、そして解散する。Jimは逝き、夏は終ったんだ。秋の冷たい雨はやがて氷雪に変わる。
そして今年もやはり夏の終わりの大雨が降る。轟く雷は、Jimの歌声だ。
Jim Morrisonの生前最後の写真 1971年6月28日
🎶ここまで私のブログを読んで頂き有り難うございました。
■私のブログ記事内のリンクの一部はアフィリエイトリンクを含んでおります。詳しくはサイトポリシーをご覧になってください。