ハーフウェイ・トゥ・サニティ(1987年の作品)は、ラモーンズの最高傑作じゃないか!
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CJ Ramoneが4枚目のソロアルバムを発売
5月10日に元RamonesのCJ Ramoneが4枚目のソロアルバムを発表した。今じゃ残り少ないRamonesの生き残り。相変わらずのパンクサウンドで、パンクは死ぬまでパンクロッカーなんだなぁと、しみじみとこのアルバムを聞いた。それにしても、Ramonesはもう存在しないんだから、Ramone姓を名乗らなくても良いと言うのに、なんとも律義な人だ。
CJ RamoneはRamonesの2代目ベーシストだ。Dee Deeが脱退したので代わりのベーシストとして加入。彼は他のメンバーよりも15歳以上も若く、1989年のバンドに加入時にはまだ24歳だった。オレはその当時のRamonesをクラブチッタや、浅草の常磐座で体験したのだが、長髪を振り乱しながらベースを弾きまくるCJはとてもかっこよかった。Ramonesは若返りに成功したんで、それから7年ほどバンドの寿命が延びたんだとオレは思っている。そのCJ Ramoneも今や振り回せる髪もなく、スキンヘッドで小太りのおっさんになってしまった。何時の間にそんなに時間が流れてしまったんだろう。
CJと云えばMetallicaのベースに誘われていたなんて話をつい最近知った。もし実現していたら、RamonesとMetallicaのベースを弾いた男、ってすご過ぎる肩書きだと思うのだが。残念だ。
Ramonesの最高傑作アルバムは?
オレの一番好きなRamonesのアルバム、もしくは彼らの最高傑作はどれかと問われたなら、迷う事なく「Halfway to sanity」を選ぶ。同じ質問を他のRamonesのファンにすれば、多数の人は、やはりあの衝撃的な1stを選ぶんだろうね。オレの大学時代の友達、ゴトー君は「80年代半ばからのRamonesはつまんねーよ」なんてほざいていたのを思い出す。
そんな多くのRamonesファンがあまり触れない、彼らの音楽を語る中で殆ど取り上げられない、その存在を忘れられてしまったような作品がこの「Halfway to sanity」だと思う。じゃあこのアルバムが、沢山ある彼らの作品の中の凡庸な一枚かと言えば、そうじゃない。
このアルバムは、ベースのDee Deeが実質的に製作と演奏に加わった最後のアルバムだった(Brain DrainまでDee Deeは居たものの、あのアルバムでは数曲でボーカルをとったのみで、ベースを弾いたのは殆どセッションミュージシャンだった)。そんなレコード屋の棚にひっそりと置かれて、たまに間違って手に取られるものの、すぐに棚に戻されてしまう。そんな情景が浮かびそうな、このアルバムだけども、出来が悪いのかと言うと、決してそんな事はない。オレは彼らの作品の中で、これが一番好きだし、アルバムとして一番聞き応えがあり、曲の出来もすごく良いと思うのだ。
Halfway to sanity
「Halfway to sanity」は1987年にリリースされた。彼らの10枚目のスタジオアルバム。12曲も入っていると云うのに、演奏時間はたったの29分53秒。前々作のToo tough to dieから顕著になっているのだが、このアルバムでもDee Deeが半分以上の曲を書いている。このアルバムでは12曲中7曲がDee Deeのもの。ハードコア色が強いのは、やはりDee Deeの貢献だと思う。
とても年寄り臭い言い方だが、オレも若い頃はRamonesのどのアルバムも熱中して聞いてきた。だが、だんだんとその単調さに飽きが来た。一枚、また一枚と聴かない順に彼らのアルバムを手放していって、結局今手元に有るのはRamones ManiaとHalfway to sanityの2枚だけになってしまった。これだけは飽きが来ないのだ。Halfway to sanityを一言で云うなら、ポップなハードコアパンク・アルバムと云えるんじゃないだろうか。Discharge等のゴリゴリのハードコアバンドの曲は、正直鼻歌を歌うなんてちょっと難しい。だけども、このアルバムに収録されたどの曲も、鼻歌で歌う事が出来るのだ。ポップさはというのはRamonesの特徴の一つだ。
1 I Wanna Live
2 Bop ‘Til You Drop
3 Garden of Serenity
4 Weasel Face
5 Go Lil’ Camaro Go
6 I Know Better Now
レコードだとここまでがA面。1〜5曲目までDee Deeの曲、もしくはDee Deeと他のメンバーの共作。
ギターのアルペジオで始まるメランコリーな1曲目に続いて、ハードコアな2曲目。
3曲目もアルペジオで始まるダークでちょっとオドロオドロシイ感じの曲。4曲目はもろハードコア。5曲目は打って変わって、突然ビーチボーイズ風の軽いアメリカンロックサウンドになる。ボーカルに女性の声が聞こえるが、これはBlondieのDeborah Harryがゲスト参加している。緊張感一杯で4曲目まで一気に聞かせて、5曲目に軽い歌を入れて緩ませる。そして再び5曲目でハードコア調の曲に戻る。この緩急のつき具合がこのアルバムの良い所。Ramoensも成長しているのだ。最初から最後まで一本調子じゃ面白くないと言う事を。
7 Death of Me
8 I Lost My Mind
9 A Real Cool Time
10 I’m Not Jesus
11 Bye Bye Baby
12 Worm Man
メリハリの利いたリフがカッコいい7曲目がB面のスタート。8曲目はDee Deeがボーカルで、ハードコア調の曲になる。
9曲目は、いつものRamonesノリのビーチボーイズ風のポップソング。一旦リスナーを緩ませておいて、このアルバム最強のハードコア曲の10曲目に突入する。
何と言ってもI’m not Jesusはスローなイントロから始まり、高速ハードコアに切り替わる所が非常にカッコいいと思うのだ。
そしてやはり狙ったようにポップな11曲目。そして最後はハードコアソングで、このアルバムを〆る。
Dee Deeが曲を多く書くようになってからのRamonesは、音がハードコア寄りの音に成って行ったと云われる。こうして聞いてみるとDee Deeは印象的な耳に残るメロディーも作れるのだ。Dee Deeはただのハードコア野郎じゃなくて、彼はメロディーメーカーでもあったのだ。このアルバムのA面なんか、ほとんどD面(Dee Dee面)と云っていい。ちょっと切ない、彼のメロディーセンスの良さがぎっしりと詰め込まれている。
正直ハードコア路線になったToo tough to dieとAnimal boyはただハードなだけで、曲が良くない。良いメロディーの曲が無いのだ。ところがHalfway to sanityでは、これまでのRamonesサウンドと、ハードコア路線を上手に混ぜ合わせ、そしてポップで良質なメロディーを組み合わせる事に成功した。今じゃ殆ど取り上げる人もいないこのアルバムだが、実に良く出来た良いアルバムなのだ。
だからオレは断言する。半分イカレているんじゃないかと云われようと、Halfway to sanityこそRamonesの最高傑作だと。
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