URCの再発からプカプカと西岡恭蔵さんを思い出す

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プカプカは好きな歌じゃなかった

好きと嫌いはベクトルが逆なだけで、実は同じエネルギーを持っているのだろう。昔嫌いだったものが、ある日ふとした拍子で好きになるなんて云うことがたまにある。以前嫌いだった曲が、ある日を境に好きになる。「プカプカ」と云う曲が、正にそんな曲だった。

「プカプカ」はいろいろな人がカバーしている、良く知られたフォークの名曲だ。この曲で歌われるのは、自由奔放な女に振り回される、氣のいい男の悲哀だ。オレはこの歌が、どうも嫌いだった。理由は特にないが、曲調とか、変に氣だるげな感じが好きになれず、長い間嫌な歌の一つだった。

何が嫌だって、あの歌いだし「おれのあんこは〜♫」っていうところから気にくわない。なんだか女性器を彷彿させるようなその言葉が嫌だったが、あるときその「あんこ」というのが「あの娘」の意味だと知った。それはDiscover URCと云うコンピレーションアルバムに収録された、大西ユカリと新世界の「プカプカ」を聞いた時の事だった。

Discover URCの歌詞カードを見ながら曲を聴いていると、「あの娘」と歌っている事に気がついたのだ。それまでは何だか春歌みたいで嫌だなと思っていたのが、あっさり瓦解。よく読めば歌の内容も自由奔放な女に振り回される男の悲哀で面白い。それからだ、この歌が好きになったのは。

今じゃ、会社の飲み会なんかでカラオケで歌ってしまうくらいだ(会社の人間とカラオケに行くと、英語の歌は受けない。なので日本語で歌えるものを探すと、この手の歌になってしまう。趣味の合わない人達と行くカラオケはツマラナイ)

埼玉県日高市の巾着田でギャザリング

実はオレ、このプカプカの作者・西岡恭蔵さんが、ギター一本で歌うプカプカを目の前で聞いている。それが、この歌を初めて聞いた時だった。たぶん1995か1996年の1月とか2月の寒い時期だったと思う。

東京で生活していた頃は、お茶の水のエコショップGAIAによく通っていた。自然食品、自然音楽、エコロジー関連の書籍など、オレが好きなものいっぱいのお店だ。こういうお店にはそういう人種が集るので、そういう情報も非常に得やすかった。お店に置いてあるチラシは要チェックだ。いろんな人がいろんなところで面白いイベントを企画していた。今じゃネットでどんどん拡散する時代だけれども、20年以上前はチラシが非常に重要だった。

そのGAIAで見つけたいベントが、「ギャザリング」だった。ちょっと妖しげな雰囲気が漂うイベントだ。埼玉県の奥地、日高市の巾着田と云われる場所で、なにやら行われるという。ライブあり、出店あり、セイクレッドランありの、行ってみなければ何をするかわからないイベントだった。オレはそのイベントに寝袋一つだけ持って、はるばる日高市まで出かけたわけだよ。

巾着田と云われる曲がりくねった河原が、そのギャザリングの会場だった。オレが着いた時にはすでに多くの若者で賑わっていた。っていうか、オレもその頃は若者だった。あちこちでみんなが協力して何かを作ったり、立てたりしている。中心になって動いているのは、吉田ケンゴという、ドレッドヘアと言うか、ライオン丸がパーマを失敗したような物凄い髪形のあんちゃんだった。オレも見知らぬ人達と協力して、一張り15人は軽く寝泊まりできるティピの建造を手伝ったよ。

会場内にはいろいろな出店が並び、食べ物を売っている人達や、Tシャツ、その他手製の小物やら、みんな思い思いの作品を持ち寄って売っていた。それを見る、そしておしゃべりするのも楽しかった。なんせ、みんなGAIAみたいなお店に引きつけられる人達ばかりだから気楽な雰囲気だった。

夜はそれぞれ持参したテントなり、皆で作ったティピでごろ寝だ。遅くまでたき火を囲んでおしゃべりに盛り上がる人もいるし、人それぞれに楽しんでいた。人里離れたこんなところなので、夜空が美しく、きっと遠いご先祖様の見た夜空もこんなのだったに違いない(いや今オレの住む街の夜空と、そう変わらない)。都会のサラリーマン生活が遠くに感じる、なんだか原始人にでもなったような魂の自由を感じた一時だった。

ギャザリングで、西岡恭蔵さん本人が歌うプカプカを聞く

この時のギャザリングは1週間ほどやっていて、メインは一番多くの人が集る土日だったようだ。日曜日は午前中から特設ステージで野外ライブが行われていた。規模は違うが、ウッドストックもこんな感じだったんだろう。レゲエやフォークの様なゆるい音楽が多かったと思う。どんな人が歌っていたかは一人を除いて全く覚えていない。

その一人と言うのが、中年のおじさんで、なんだか70年代フォークの生き残りのような見知らぬおじさんだった。彼を見てどうやってその年まで生き抜いたんだろうと不思議に思ったよ。アマチュアミュージシャンにしては、ステージ慣れして、演奏も歌も腹が据わっている。どうもアマチュアじゃないぞと、彼のステージを観ていると思った。だけども、誰なんだ? このオジサンは?

そのおじさんはギター1本で、いろいろな歌を歌っていたが、その曲の1つがプカプカだった。
MCでは、「これは今ではいろいろな人が歌っていますが、私が若い頃に作った歌です」とを云っている。全然知らない人だったけれども、それなりに有名人なんだろうとその時初めて確信した。その人は皆から象さんと呼ばれていた。

後になって知るが、そのおじさんこそプカプカの作者・西岡恭蔵さんだったのだ。そうとも知らずに、こんな山奥の野外ステージの投げ銭ライブで、本人が歌うプカプカを聴いていたのだ。その時はやはり嫌な歌だなぁと思っていたけれども。

それから数年後の1999年、西岡恭蔵さんは奥さんの三回忌の前日に自ら命を絶ってしまう。もう彼の歌うプカプカは聞けない訳だ。知らなかったとは言え、貴重なものを見たものだと今になって思う。もっと彼の歌を味わっておくのだった。後悔は後でするものなんだなとつくづく思う。

■西岡恭蔵さん

西岡恭蔵さんとプカプカのことを思い出したのは、昔URCレコードからから出ていたアルバムが復刻されると言うニューズを見たからだ。西岡恭蔵さんはザ・ディランIIとしてURCレコードからデビューしている(実際にはアルバムの録音には関わっているけれども、バンドデビュー時には脱退していた)。彼らの1stアルバム「きのうの思い出に別れをつげるんだもの」の中にプカプカが収録されている。今までザ・ディランIIなんて興味が無かったのだけれど、今回の再発で購入してしまいそうだ。

URCの再発のニューズからプカプカ、そしてギャザリングの事が頭に浮かんできた。人が楽しみのためにだけ集まり、何かを作り、おしゃべりし、歌を共有する。これって、人間がもともと持っていた生活なんじゃないかなと思う。

人はただ稼ぐためだけに1日を生きているんじゃない。楽しむため、歌うために生きているんだ。音楽は聖なる存在への感謝の心だ。だから音楽を奏でると言うのは、とても神聖な行為なのだと思う。

まあそんな事で、かって嫌いだった曲が、今じゃとても好きになってしまったという話しでした。オレは本当に嫌いなモノに関しては、一切関わらない。だからこのブログでも名前すら一切出さない。ネット上でも●●国が大嫌いだとか、嫌●とか、ほざいている人は、ある日突然そんな国々が大好きになってしまうのかも知れない。好きだからこそ、そうやって執着するんだよね。

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